くまモンも登場
今年1月から全国の新聞社向けに配信を始めた子ども用の4こま漫画『タイニャーマスク』の担当記者になってから、各紙の漫画が気になるようになった。
高知県民は「いまさら」と思うかもしれないが、高知新聞夕刊に連載中の4こま漫画『きんこん土佐日記』が面白い。
筆者は高知県出身、在住の村岡マサヒロさん。主人公はタイトルにもあるように「きんこん」(金婚=結婚50周年)を迎えた老夫婦、よしき、くにえとその家族の日常をユーモラスに描いた作品である。
マスメディアの常として、幅広い読者を意識するため、テーマも、表現も、言葉遣いも“標準”に近いところを探す。新聞漫画も、その例に漏れない。
ところが『きんこん土佐日記』は、せりふも土佐弁丸出しで、良い意味でのローカリズムの魅力をいかんなく発揮している。お年寄りが主人公という設定も漫画としてはかなり特徴的だが、2人の交わすせりふにも土佐人以外には意味の分からない土地言葉がばんばん登場し、まこと“遠慮”がない。
やぼを承知で、ある日の漫画をシナリオのト書きふうに紹介してみる。
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2人でテレビを見るよしきとくにえ。
くにえ「あしゃこの芸能人うんと嫌よ」「まっことこわい鬼みたいな顔してから…」「しょうえずい(とてもひどい=筆者注)わよ」
よしき「そんなに嫌やったら」「他のみようぜや」
よしき、リモコンで番組をかえる。
くにえ「なーんでかえるぜ~」
振り返るくにえ。
よしき「すっすまん」「(おまんの顔が一番こわいわ…)」(2004年5月14日)
× × ×
新聞漫画の風合いにわずかな毒をまぶし、その絶妙なバランスを維持しながら『きんこん土佐日記』は、来春で連載10周年を迎える。
ところで地方紙の4こま漫画といえば、熊本日日新聞で今年4月から、熊本県のゆるキャラが主人公の『くまモン』が始まった。
何年もかけて高知でゆっくりと定着した老夫婦キャラと違い、こちらは全国的に大ブレークしたご当地キャラを主人公に登用しての作品。熊本県出身の放送作家小山薫堂さんを監修に迎え、最後のオチに「~モン!」の決めぜりふで終わる『くまモン』は、『きんこん土佐日記』とはまた違った温かみがある。
将来どう育っていくのか楽しみ…などと言っている場合ではなく、『タイニャーマスク』の作者かみやたかひろさんと、今日もこれから作戦会議だ。(大津薫・共同通信文化部記者)
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大津薫のプロフィル
おおつ・かおる 1967年、埼玉県生まれ。大分支局、横浜支局、名古屋編集部を経て、2003年に文化部。漫画家ちばてつやさんの三男で文星芸術大(マンガ専攻)講師の千葉修平さんに四こま漫画の描き方を教わったことがある。ヒントをもらいながら、凡庸な作品を一つ描くのに4時間! 疲労困憊。その夜は仕事にならなかった。
(共同通信)