『小倉優子のはじめてママdays』 小倉優子著


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いいから休め
 どうした! こりん星からやってきたりんごももか姫。いつの間にか地に足着いたクソ真面目キャラになってるぞ! って思わず叫びたくなる新刊が発売。

 昨年6月に第1子が誕生した小倉優子さん。本書は家事に育児に奮闘するゆうこりんの日常をまとめた、フォトエッセーだ。彼女の持つ、ふんわりしたイメージに合わせた、優しい雰囲気のほんわかエッセー……かと思い、き、や。想像以上に凄まじい。
 たとえば、6時起床。掃除は朝8時から、拭き掃除→掃除機→ルンバでワンセット。スーパーは毎日行く派。お風呂は息子と一緒&ひとりでゆっくりの1日2回。仕事がある日の夕食は、前の晩に作っておく……って何なのヒマなの!? んなわけないよね! じゃなに? なんでそんな働き者なの? 意地? 執念? 完璧主義??? パステルカラーで彩られた、とんでもないド根性育児日記だった。い、息苦しい……。これ、世の中のママたちをノイローゼにしかねないんじゃ、と心配になるほどに、優秀なのだ。
 どっかにアラ、ねえのかよ! つって読み進めていると、何やら気になるコメント発見! それはおいしいものを紹介するページでのこと。自分へのご褒美として購入する食材のひとつに、北海道から直送のイクラやホタテ、ウニなどが紹介されていた。ご主人が注文して、自宅に届けてくれるという。
 「だんなさんがちょっと『ん?』と思う行動をしたとき、反省の気持ちなのか(笑)、魚介類を注文して届けてくれる」のだそう。「豪華な夕食にしたいときなどにおすすめ☆」らしいのだけど、いやいやそんなことより!ゆうこりんが「ん?」って思う行動ってなに! いってらっしゃいのチューを忘れた? 大事に取っておいたいちごを食べられちゃった? いーやそんなもんじゃないはず。だって北海道の魚介だもん。「北海道の魚介を直送」するに値するほどの「ん?(怒)」だったわけDA・YO・NE。おせーておせーて! 誰にも言わないから教えて! ……とね。思わず夫婦の不協和音を探したくなってしまう。だってゆうこりん、パーフェクトなんだもん! 揚げ足のひとつも取りたくなるっつーの。
 本書でゆうこりんは「人生は一度きり」と何度も繰り返す(ちょっとしつこい)。だから後悔しないように、全力投球したい、と。ひょっとしたら数年後、ママ1年生の自分を振り返って、「あの頃は頭がどうかしてた」なんてことを言う日が来るかもしれない(お得意の!)。それくらい彼女の育児、主婦業に対する姿勢は、優等生だ。優等生すぎて退屈だ。何の面白みもない。っていうかちょっとイカレてる。イカレてるけど、その頑なとも取れる一本気は、なんだか妙に、読む者の心を打つ。
 でも、最後にこれだけは言わせて。ルンバの前に拭き掃除&掃除機とか、やめてほしい。だってルンバってアレじゃん、自分の手で掃除機かけたくない我々(モノグサ)のための魔法の道具じゃん。それなのにそんなガッツリ掃除されたら、こっちの立場がないっつーの! いいから休め、我々のためにも!
 (主婦の友社 1300円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット 出版社でOLをしつつ、ライターとしても細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

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