『タイピスト!』 仕上げはスポ根ラブストーリー


社会
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 女性が社会進出し、秘書が憧れの職業だった1950年代の物語。と書くとフェミニズム臭プンプンの映画と思われるが、当時実際に行われていたというタイプ早打ち大会の映像をヒントに、まさかのスポ根ラブストーリーに仕上げてしまった。

 これは、田舎娘のローズが、上司のスパルタ指導によってタイプ世界一を目指す女版『ロッキー』…いや、50年代ファッションで武装してド根性で羽ばたくさまはフランス版『マイ・フェア・レディ』であり、『プリティ・ウーマン』である。オシャレな女子向け映画だが、そこはかとなく感じる泥臭さが良い。
 ヒロインを務めるのは、ベルギー出身のデボラ・フランソワ。カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した『ある子供』で注目され、今やフランス映画界で引っ張りだこ。そんな彼女の人生とヒロインの姿が重なる。ちなみに『ある子供』で共演したジェレミー・レニエは公開中のフランス映画『最後のマイ・ウェイ』で、歌手クロード・フランソワを熱演している。あらためて、この2人の逸材を見いだしたベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟の先見の明に唸る。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督・脚本:レジス・ロワンサル
撮影監督:ギョーム・シフマン
出演:ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ
8月17日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山 治美