『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』


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人のふり見てわがふり直せ
 『そして、私たちは愛に帰る』や『ソウル・キッチン』が高く評価され、今や世界三大映画祭の常連となったドイツのファティ・アキン監督。トルコ移民である彼が、祖父母の故郷である同国のトラブゾン地域で起こったゴミ処理場建設をめぐる住民の闘いを追ったドキュメンタリーである。濃密なフィクションを製作する一方で、5年間もこの問題に取り組んでいた行動力にまず驚いた。さらに中身はまんま、日本の至る所で目にしている住民VS.政府の攻防戦を見ているかのようで二度びっくり。これはデジャブか!?

 この地域は黒海に沿岸に面し、美しい自然がウリだ。だがずさんなゴミ処理場ができて汚水が地中に流れ出し、住民は窓を開けていられないほどの悪臭に悩まされる。だが抗議運動をすれば、国の政策を妨害したと逆に弾圧されてしまう。権力の横暴だ。そんな最中に大雨が降り、汚水が村に溢れ出す事件が起きた。ゴミ処理場の管理者の言い訳は「こんな大雨が降るとは思わなかった」。つまり“想定外”ってこと。言い訳までどこかと一緒で苦笑するしかない。
 まさにこれは遠い国の話ではなく、我々の話でもあり、地球規模での問題でもある。ぜひ日本のお役人たちに見ていただき、“人のふり見てわがふり直せ”となってくれればいいのだが。★★★★★(中山治美)
 【データ】
監督:ファティ・アキン
撮影:ブンヤミン・セレクバサン、エルヴェ・デュー
出演:フセイン・アリオグル市長、ブンヤミン・セレクバサン
8月17日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

中山 治美