『ファッションフード、あります。』 畑中三応子著


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カワイイ「食」の文化史
 空前のパンケーキブームに沸いた2013年、既にブームも下火を迎えつつあるが、人気のパンケーキショップでは今も3時間待ちはザラらしい。パンケーキ、結局どれも、大差ない(江藤、心の俳句)。流行っているものや新しいものがとにかく大好きな、不思議の国ジパング。

 「現代の日本は食べ物まで『新しい』という価値観が支配し、激しいはやりすたりを繰り返している」と語る著者は、流行の洋服や音楽、アートやマンガなどのポップカルチャーと同じ次元で消費されるこうした食べ物を“ファッションフード”と名付けた。
 料理編集者として第一線で働いていたという著者自身の経験も手伝って、1970年代の本格的ファッションフード成立からの歴史を、詳細に紐解いていく。ファッションフードの変遷の中で、私たちの食生活、食文化がいかに変化し、そこに日本人の価値観がどう結びついてきたのか、という深いテーマまで語られるという、まさに「食」の文化史!
 マクドナルドの上陸から始まるファストフードの来襲、カップ麺、アイスクリーム、ドーナツ、クレープ、ベルギーワッフル、ワイン、地ビール、B級グルメ、スローフード、食べるラー油……などなど、これでもかというほど出てくるファッションフードの数々。次から次へと新しいものに飛びついてきた歴史が、こんなにもあるのかと思うと圧巻だが、同時にブームの終焉に思いを馳せるとゾッとするような気持ちがするのも事実。
 個人的には、まさに同世代な空前のティラミスブームの裏側や、そこから派生したカヌレ、パンナコッタ、ナタデココといった二匹目のどじょう狙いスイーツなど、「(すっかり忘れていたけれど)懐かしい~」と当時の様子を思い出し、脱線しながら読み進めるのが楽しかった。紅茶キノコの謎のブームや、ファストフード店の来襲、イタめしなど世代ごとの懐かしさのポイントが必ずあるので、年表を眺めながら大人数で楽しむなんてのも乙。ファッションフードすごろくなんてあったら、すごく盛り上がりそう。
 ワッフルコーンのアイスクリームを想起させる、乙女な装丁も素敵で女心をくすぐる。
 (紀伊国屋書店 2400円+税)=江藤かんな
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江藤かんなのプロフィル
 えとう・かんな 1980年生まれ。書籍編集を経て、雑誌編集の道へ。女性の興味・関心ごとを探る日々。好きなものは、こけしとおかし、お寺と仏像、お笑い全般。得意ジャンルは、雑学、ブーム、ゴシップ系。くだらないこと(もの)、大歓迎!
(共同通信)

ファッションフード、あります。: はやりの食べ物クロニクル1970-2010
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