『キャラ立ち民俗学』 みうらじゅん著


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“ムダ”が生み出す研究?論文
 先日、NHK『スタジオパークからこんにちは』に出演していたみうらさんに視聴者の人からこんな質問が。「私は飽きっぽいのですが、みうらさんみたいに飽きずに長く続けるコツはなんですか?」

 それに対して「飽きないフリをすることです。僕だってもうとっくに飽きてるんです。でも、飽きないフリをし続けていると、それが癖になるんで」と。さすが「一人電通」と称して、つまらないものの中にある“面白さ”発掘のために「好きじゃないものを無理矢理好きになる」という苦行の数々を積み重ねてきた人のお言葉!
 みうらじゅん的民俗学エッセーとして本書で紹介されるのは、性にまつわる神、即身仏、土偶(D&G/注・カッコ内はみうらさんによる命名)、天狗(テングー)、海女(AMA)、鍾乳洞(SHOW・NEW・DOW)、地獄など、みうらファンには既におなじみのラインアップ。結局、その振り返りに過ぎないのだが、それでも面白いと思うのは決して私のひいき目だけではないはず。現在の『あまちゃん』ブームにしても、やっぱりみうらさんは先駆者なのだと、声を大にして言いたい。
 若者のお墓参り離れを防ぐためにと「墓参ラー」というお墓に参れば参るほど参ルが溜まるという参レージシステムや山岳戦隊「テングレンジャー」を考案したり、全国各地の「ヌードサックス」像に注目したりと、独自の視点は変わらずギンギンに冴え渡っている。
 本書の帯にも「無駄な努力と無駄な物量。みうらじゅん的研究論文。」とあるが、常々「人の価値観は分量で決まっているんです。一個や二個だと不思議がられることも、千個集めれば『凄い』に変わるんです」と語っているように、その努力の賜物とも言える一冊だ。
 ちなみに冒頭の番組で、今の“マイブーム”を問われると、「しびんです」と返答。対応に困ったアナウンサーの顔を見て「その困った感じが、(ブームが)くる気がするんですよね、一般の人が避けがちなところに何かがあるから」と、その反応にまさかの手ごたえを感じるあたり、もうたまらないなー、と惚れ惚れしてしまう。
 もちろん、そんな自分は、完全にDS(どーかしてる、の略。みうらさんによる造語)!と自覚しておりますが、やっぱり私にとってみうらさんは、とんでもなく偉大なのです。
 (角川書店 1000円+税)=江藤かんな
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江藤かんなのプロフィル
 えとう・かんな 1980年生まれ。書籍編集を経て、雑誌編集の道へ。女性の興味・関心ごとを探る日々。好きなものは、こけしとおかし、お寺と仏像、お笑い全般。得意ジャンルは、雑学、ブーム、ゴシップ系。くだらないこと(もの)、大歓迎!
(共同通信)

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