『沖縄自治州―特例型沖縄単独州を求めて―』 道州制考える切り口提起


社会
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『沖縄自治州―特例型沖縄単独州を求めて―』 沖縄県議会議員経験者の会 編 琉球書房・1500円

 道州制導入に関する動きが加速しつつある中で、沖縄県議会議員経験者の会(外間盛善会長)が約2年にわたる調査研究の成果として『沖縄自治州―特例型沖縄単独州を求めて』を発刊した。

 2007年にオール沖縄で「沖縄道州制懇話会」が結成され、1年目の08年5月に第1次提言を公表、2年目の09年9月に提言書をまとめ県知事と県議会議長に提出している。懇話会は審議の公開、マスコミ報道、シンポジウム開催等によって県内世論を大きく高めると同時に、中央政界や経済団体等に提言内容を知らせることができた。そのことが「沖縄単独州」を中央レベルで認知させた大きな原動力になっている。
 この懇話会の意志を引き継ぐ形で、県議会議員経験者たちが与野党派を超えて「沖縄単独州県議OB会」を結成し、「特例型・沖縄単独州」実現を目指して活動してきた。本書にはその活動の基礎となった論文、インタビュー、Q&Aに加えて、歴史的価値のある貴重な文書資料(19点)が収録されている。
 大田県政時代に、沖縄は国際都市形成構想と全県フリーゾーンを含む経済特別区、その受け皿としての一国二制度や特別県制構想などが全県的に論議されたことがあった。当時、韓国・済州島は沖縄に3回も調査団を送り、沖縄から学んで「済州島自治政府」を実現している。本書で呉錫畢先生が「済州特別自治道」の現在・展望及び考察について述べているが、教えた側が先を越された形ではあるが沖縄も見えてくる。
 道州制論議の最大の難関である経済・財政問題について、宮城弘岩氏の「特例型沖縄単独州の経済論」は重要な切り口を提起している。また、沖縄単独州に関するQ&Aはとても分かりやすい解説が入っている。
 資料編では、久場政彦/なぜ「沖縄方式」か(1971年)、比嘉幹郎/沖縄自治州構想論(1971年)などの貴重な論文、復帰を前に琉球政府(屋良主席)がまとめた建議書の一部も入っている。本書は、沖縄を知り、これからの沖縄を考えていく上でまさに貴重な必読書である。
 (狩俣吉正・元連合沖縄会長)