『ひばりの朝2』 ヤマシタトモコ著


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助けて
 ああもう、勘弁して……と思いながらも、ページをめくる指が止まらない。重すぎる展開に心が折れつつ、それでも続きが気になってしまう。そんな本がある。
 漫画家・ヤマシタトモコの新刊は、中学2年生の少女が主人公。14歳とは思えない肉感的な身体を持つ日波里は、男たちから性的な目で見られ、女たちから悪意を持って避けられる。

 ある日、日波里にまつわる噂が学校中を駆けめぐる。「父親からの性的虐待」。それによって彼女はますます学校に居場所をなくしてしまう。日波里と接触を持とうとする男、劣等感を抱く女、片想いをしている少年、彼女をおとしめようと企てる少女。両親、親戚の男、担任の教師。それぞれのエゴが絡み合って展開される物語は、渦中の彼女に何をもたらすのか。
 嫉妬、蔑み、憧れ、劣情……描かれる心理はどれも生々しく、直視するのもはばかられる。しかし目を背けたくなるのは、自分の中にもある感情だから。
 物語の終盤、いよいよ追いつめられてしまった日波里は、「息を止めて」やり過ごすことを覚える。「息を止めていたので平気でした」「息を止めていたので平気でした」「息を止めていたので平気でした」……。まるで自ら命を絶ってしまいそうな危うさに、読みながら思わず、「助けて」と口にしてしまった。
 日波里の朝に、果たして希望は訪れるのか。明確にされてないまま迎えたラストシーンは物足りなくもあるが、どうか彼女に明るい朝が来るように、そう願わずにはいられない。
 しかし、日波里を目の前にしたとき、果たして同じことを願えるのか。一抹の不安が、どうしても拭えない。
 (祥伝社 648円+税)=アリー・マントワネット
(共同通信)

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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット 出版社でOLをしつつ、ライターとしても細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

ひばりの朝 2 (Feelコミックス)
ヤマシタ トモコ
祥伝社 (2013-07-08)
『ひばりの朝2』 ヤマシタトモコ著
アリー・マントワネット