『ねこはい』 南伸坊著


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ひとりぼっちの夜に
 た、た、たまらん……。この表紙の猫のブスっぷりにやられ、即購入。
 気ままに暮らす猫たちが、俳句を詠んだらどうなるか。南伸坊の新刊は、猫による俳句「ねこはい」とイラストをまとめた一冊だ。

 登場するのはほぼ猫のみ。猫が見た、日本の四季折々の風景が描かれている。花や虫、鳥は出てくるが、ほぼ没交流。飼い猫もいれば野良もいるようで、そこかしこに人の暮らしが垣間見える。が、人間は誰ひとり、登場しない。それがどことなく、さみしい。
 そんなさみしさを噛み締めつつ、ふと思う。俳句って、ひとりの時につくるものかも。もちろん俳句の会なんてものもあるけど、基本的には自分で考える時間が必要よね。ふたり以上で作ろうとしたら、たとえば悪ふざけが過ぎ、揚げ句季語入れ忘れ、エロ川柳になっちゃいそうだし(あたしだけ…?)
 言葉を紡ぐという行為の孤独を、群れをなさない猫に投影したような本作。眺めているうちに、このさみしさは猫の気持ちなのか、それとも自分のさみしさを猫に重ねているのか、わからなくなってくる。
 それでも読後が温かな気持ちになれるのは、猫たちがみんな、ひとりの日々をのびのびと謳歌しているから。孤独であることは、わるいことじゃない。イラストレーターでありエッセイストという肩書きを持つ著者、南伸坊。彼はきっとこれまで、多くの時間をひとりで表現と向き合ってきたであろう。そんな著者の、孤独を肯定する声が聞こえた気がする。ひとりの夜に開きたくなる一冊だ。 (青林工芸舎 1000円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット 出版社でOLをしつつ、ライターとしても細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

ねこはい
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南 伸坊
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アリー・マントワネット