『ベニシアさんの四季の庭』 壮絶な人生とガーデニング


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 NHKで放送された『猫のしっぽカエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし』で話題になった、築100年以上の古民家に住む英国人女性ベニシアさんの暮らしぶりを追ったドキュメンタリー。ガーデニングが盛んな英国人らしく、ハーブや花に囲まれて、それらを食べ物や清掃などに生かす日々は日本人の憧れ。梨木香歩原作小説の映画化『西の魔女が死んだ』に登場した山里に住むおばあちゃんの暮らしを、そっくりそのまま実践しているかのようでワクワクしながら本作を観た。

 しかしここでクローズアップされるのは、ベニシアさんの生活の知恵よりも、壮絶な人生。離婚に、再婚した夫の浮気と生死をさまよう事故、そして娘は統合失調症を発症し、今も病と寄り添いながら生きる日々。波瀾万丈すぎるよ、ベニシアさん!
 つまり本作では、ガーデニングがベニシアさんにとっての心の癒やしとなっており、もはや生活になくてはならない存在となっていることが綴られる。ラベンダーのリキュールや家具用ワックス作りに精を出すのは、娘の病気の手助けになればという母の願いが込められていたことを知り、切ない気持ちにさせられる。それでも笑顔を絶やさぬベニシアさん。もっと感情を爆発させていいんだよと、筆者などは思ってしまうんだが…。彼女の人生に幸あれ! ★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督:菅原和彦
撮影:高野稔弘
出演:ベニシア・スタンリー・スミス、梶山正
9月14日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

(C)ベニシア四季の庭製作委員会2013
中山 治美