『ウォーム・ボディーズ』 ゾンビと人間の恋愛青春映画


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 『バイオハザード』の成功以降、恐らくゾンビ映画は最も人気の高いホラー・ジャンルだろう。それはゾンビ(生ける死体)という設定が、ジャンルを横断するキャラクターとしての柔軟性と、ゾンビ=ホラーという固定観念を併せ持っていたおかげである。これがもののけや幽霊だったら、全くの別ジャンルになってしまう。誰も『となりのトトロ』や『ゴースト ニューヨークの幻』をホラー映画とはみなさないはず。

 ところがゾンビ映画の場合、笑いがふんだんでも“ホラー・コメディー”と言われてしまう……と思っていた矢先、本作の登場である。何とゾンビと人間の“ボーイ・ミーツ・ガール”、恋愛青春映画なのだ。ストーリーは、人間とゾンビが敵対する近未来を舞台にした『ロミオとジュリエット』の変奏。つまり、ロミオがゾンビで、ゾンビ目線によって物語が繰り広げられるのである。まさか、そんなゾンビ映画が作られる時代が来るとは!
 それにしても、松本潤主演の『陽だまりの彼女』といい、以前ならホラー(怪談)映画になるはずの題材を、ラブストーリーや感動作に仕立ててしまう今の風潮は、もののけをぬいぐるみ化してしまった宮崎御大の悪影響だろうか? ゾンビ映画にまで影を落とすとは、引退してもその絶大な影響力が弱まることはなさそうだ。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督・脚本:ジョナサン・レヴィン
出演:ニコラス・ホルト、テリーサ・パーマー、ジョン・マルコヴィッチ
9月21日(土)から全国公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山 真也