『イップ・マン 最終章』 香港映画好きなら鼻血が出る


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 同じブルース・リーの師匠として知られる伝説の武術家・葉問(イップ・マン)を題材にした映画『グランド・マスター』(ウォン・カーウァイ監督)に消化不良を起こした皆さん! お待たせしました。香港映画界の雄ハーマン・ヤウ監督が、ガツンとアクション映画の醍醐味を見せてくれますよ。

 最終章と銘打っているだけあり、中国から香港へ渡った晩年のイップ・マンの人生を描くが、なかなかどうして演じるアンソニー・ウォン様はお元気。ライバルの白鶴派の宗師を演じるエリック・ツァンとの大御所タイマン勝負なんて、香港映画好きなら鼻血が出るほどの大興奮。さらにスラム街を牛耳る闇組織VS.イップ・マン軍団のバトルなどなど、手に汗握るアクションの連続だ。
 そう、香港アクションは相手が3メートルはぶっ飛び、痛みがこっちにまで伝わってくるような熱戦が魅力。やたらスローモーションを多用して様式美を強調したカーワイ版じゃ、その面白さは半減。映画的な“魅せるアクション”はまた別物なのだ。ただカーウァイ版はイップ・マンの人生をより知るための予習としては最適かも。晩年も若い女性がそばにいたようで、先生、なかなかモテモテだったようです。そしてラストにちらっとブルース・リーも登場するサービスもアリ。娯楽映画はこうじゃなくっちゃ。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:ハーマン・ヤウ
アクション監督:ニッキー・リー、チェックリー・シン
出演:アンソニー・ウォン、ジリアン・チョン
9月28日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山 治美