『タンゴ・リブレ 君を想う』 ぶっ飛んだB級コメディー


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 コレ、映画会社的には「無味乾燥な生活を送っていた看守が、タンゴ教室で出会った女性によって運命が変わる」という、男の成長物語としてキレイにウリたいのでしょうが、なかなかのぶっ飛んだB級コメディーですゾ。

 物語のきっかけは、看守と女房アリスが同じタンゴ教室に通っていることを知った囚人の夫フェルナンのヤキモチから。フェルナンのとった行動が、アルゼンチン出身で刑務所一番のワル(演じているのは、タンゴダンサーのチチョ・フルンボリ)に頭を下げて、タンゴ指南を受けること。以来、刑務所中でタンゴが流行ってしまうという大笑いな展開に。
 だが、そんな浮かれ気分に水を差すのがフェルナンの共犯者でアリスの愛人でもあるドミニクの自殺未遂。…って、人間関係が複雑でなんだかよく分からん。そんな思いで見ていたら、劇中、間近で母親アリスの貞操のなさを目撃していた息子も同じ気持だった様子。「ママが誰とでも寝るからこんなことになるんだー!」と暴走し、物語はおい!おい!と突っ込みたくなる結末へ。結局、タンゴはあんまり関係なくて、小悪魔アリスにふり回される男たちの話。いや、少なくともタンゴで刑務所内は友好的になるのだから関係アリか。タンゴで更生…こっちに焦点を絞った映画にした方が面白かっただろうに(笑)。★★★☆☆(中山治美)

 【データ】
監督:フレデリック・フォンテーヌ
脚本:フィリップ・ブラスバン、アンヌ・パウリスヴィック
出演:フランソワ・ダミアン、セルジ・ロペス
9月28日(土)から全国順次公開
(共同通信)

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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山 治美