苦楽積み重ね至った「今」 「おひさま日記」著者・森山さん講演


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満席となった会場から次々と質問が上がった森山和泉さんの特別講演会=23日、那覇市天久の琉球新報社

 広汎性発達障がいのある双子の日常を分かりやすく描き、多くの人の共感を呼んでいる6こま漫画「ひなとかのんのおひさま日記」(第3を除く毎週木曜日に琉球新報で連載中)の著者・森山和泉さんを招いた特別講演会が23日、那覇市天久の琉球新報本社で行われた。

「今のつまづきは将来の糧」をテーマに、漫画のモデルとなっている15歳の双子の娘の子育てについて「大変なことの裏にある、いいことにへばりついて生きていきたい」と森山さんは語った。
 漫画では2人の日常が面白く描かれることが多いが、実際は不登校になったり、学校でトラブルを起こしたりと「楽しいことばかりではない。発達障がいは消すことはできない。つらいこと、楽しいこと一日一日を積み重ねていくしかない」と実感を込めて語った。
 かのんさんが小学校低学年のころ、手に負えないほどトラブルが続き、子育てがあまりにもつらく、2人で車に乗っている時「このままどうなってもいいや」と死まで考えたこともあったと振り返った。しかし、その時後部座席に乗っていたかのんさんが、「手のひらを太陽に」の歌を歌い始めたという。
 「『僕らはみんな生きている。生きているから悲しいんだ』―。なぜ今、この歌を歌う? と思ったが、歌詞を聴いて、誰かが『頑張れ』と言っていると感じ、思い直した」と述べ、会場は笑いと涙に包まれた。
 2人は絵が得意で、現在琉球新報本社1階で絵画展を開催しているが、森山さんは2人に一度も絵描きになってほしいと思ったことはないという。
 「続けることは大事なので、そこは導いてあげたい。ただ、将来つまずいた時に『私にはこれができる』というよりどころに絵があればと思う」と話す。
 森山さんは将来独り立ちしてほしいという思いから、見守る姿勢に徹している。2人は来年高校入試を控えている。通信制や単位制、専門学校など多くの選択肢があることを示し、「あなたがあなたらしくいられる場所はきっとある。その場所を見つける手伝いをするよ」と伝えているという。
 「ひなとかのんの絵画展」は、27日(午前10時~午後4時)まで琉球新報本社で開催されており、連日100人以上の人が訪れにぎわっている。
 作品の一部は引き続き、那覇市首里久場川町のコーヒーハウスハコニワで30日~10月29日まで展示会を開催するほか、西原町翁長の琉球銀行坂田支店ロビーでも展示を予定している(10月31日~11月29日まで)。コーヒーハウスハコニワは(電話)098(988)0220。