日銀は21日発表した10月の地域経済報告(さくらリポート)で、全国9地域すべての景気判断を7月の前回報告から引き上げた。国内需要が堅調に推移し、雇用・所得環境にも改善の動きがみられたため。
2005年にさくらリポートの調査を始めて以来、北海道と四国の景気判断に「回復」の表現を初めて盛り込んだ。日銀は春先以降、全国的に景気判断を引き上げているが、先行きに関しては「公共投資などの政策効果や個人消費がけん引してきた回復が、製造業に波及するかにかかっている」との認識を示した。
ことし4月の報告は、全地域で判断を引き上げた。為替相場の円安や株価の上昇を受け消費意欲が改善したためだ。7月の報告も、公共投資の増加などを背景に8地域で上方修正した。今回は、個人消費や公共投資が堅調だったのに加え、消費税増税を前にした駆け込み需要から住宅投資が好調だったことを考慮した。
ただ日銀は円安株高による資産価格の高騰や心理改善が個人消費の増加につながる動きは「夏ごろまでに一服した」と指摘した。
地域別の景気判断では北陸を除く8地域で「回復」の表現を盛り込んだ。北陸は全国に比べ製造業の回復に鈍さがあるとみており、「着実に持ち直している」と慎重な表現にとどめた。北海道、四国は「緩やかに回復しつつある」と判断した。
東日本大震災からの復興需要が続く東北は「回復しつつある」から「回復している」に上方修正した。東海など4地域も「緩やかに回復している」に引き上げた。
日銀の黒田東彦総裁は21日午前、東京都内の本店で開いた支店長会議であいさつし、景気が「緩やかに回復している」と述べた。