【交差点】マハティールとリー・クアンユーの話


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 私はシンガポールでマイカーを持っていない。シンガポールでは車に高率の税金がかかる上、車そのものの価格のほかに約100万円もするCOE(車所有権)という証紙を購入しなければならないからである。これは国土が狭いシンガポールで車の交通量を制限するための政府政策である。
 政策は理解できても、購入するには腹立たしい。また、シンガポールでは公共交通施設が発展しており、移動に困らないために今まで車を所有していなかった。ただ、仕事も軌道に乗ってきて、店舗が4店舗に増えたのと2007年はさらなる出店計画があるため、ついに抵抗をやめ購入を決意した。
 先日、シンガポールの友人と車購入の話をしていたら、彼から面白いジョークを紹介してもらった。マレーシア前首相マハティールとシンガポール元首相リー・クアンユーのジョークである。ある会談でマハティールがマレーシアの国産車プロトンの成功を誇らしげに自慢した。
 「マレーシアではプロトンの国内販売は計画以上で大成功を収めている。シンガポールには、そんな大型産業はありませんよね」
 リー・クアンユーが余裕シャクシャクでやり返す。
 「そうですか、それはすごい。だけどシンガポールでは、そんな大型投資をして車なんか造らなくても、COEという紙切れを、プロトン1台以上の価格で多くの国民が購入していますよ」
 なかなか面白い話であるが、私にとっては笑えない話である。
 (遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)