【チャイナ網路】変わる故宮博物院


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 故宮博物院が昨年末、リニューアルオープンした。現在開催中の記念特別展は、北宋の書画や汝窯(じょよう)の青磁を集めた史上最大規模の宋代文物展「大観」と大英博物館展の2大イベント。2月にはこれまでの同院のイメージを覆す、野外での能楽上演も行われた。
 新コンセプトは同院をアジアの博物館と位置づけることだ。65万点の至宝を所蔵する同院だが、実のところ展示品は3千点程度。「中国的ではない」などの理由で文字通り“お蔵入り”の宝物が膨大に存在する。その価値を再評価するための作業が始まっている。
 参観者の視点に欠けた設備や運営方針にも改善の余地は多かった。広い館内にいすは少なく、気の利いたレストランもない。ミュージアムショップのセンスも大いに疑問だった。入場者が過去10年で3分の1に落ち込んだのもうなずける。
 改革のキーワードは「古いものこそ新しい」。博物館を市民生活とリンクさせ、宝物を“美”のデータベースと位置づけて企業にもアピールする。斬新で人に優しい博物館に生まれ変わろうとしている同院に期待したい。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)