『清須会議』 歴史好きにはたまらない


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 三谷幸喜監督らしい、重箱の隅をつつくような、歴史の盲点にスポットを当てた作品だ。織田信長亡き後の跡を誰が継ぐのか? 信長の重臣だった柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、池田恒興が参加した清須会議を開催するまでの、関係者の駆け引きを描いていく。先に刊行した小説版は各人物たちのモノローグで構成されているが、映画版は総勢26人のキャストによる群像劇と趣が異なる。だが、後の歴史が示すように、カギとなるのは天下人となる秀吉だ。

 三谷監督が託したのは、『ベッジ・パードン』『ドレッサー』と舞台でも立て続けに起用している大泉洋だ。これが勝家役の役所広司、長秀役の小日向文世、恒興役の佐藤浩市らベテランたちに引けをとらないほど堂々たる演技。かつ、大泉の緩急自在の演技は、人心掌握にたけたと言われる秀吉役にハマっている。大泉“秀吉”がどのように時代を自分の元へ手繰り寄せていくのか? 歴史好きにはたまらない内容だ。
 ただ、これはオールキャスト出演を好む三谷映画の欠点でもあるのだが、隅々のキャストまで花をもたせようとするので冗長になりやすい。また会話で笑わせるのは得意だが、ウケを狙って設定したコントのようなシーンは滑りがちだ。だがまた次回、三谷監督ならではの歴史の掘り起こしを期待したい。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
原作・脚本・監督:三谷幸喜
撮影:山本英夫
出演:役所広司、大泉洋、小日向文世、佐藤浩市
11月9日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山 治美