【国頭】手すき和紙でできたびょうぶに墨の濃淡で描かれたやんばるの自然や動物たち―。国頭村に住む菊田一朗さんは、安田のアトリエで「山原屏風」を制作している。
8日、国頭村のウフギー自然館(環境省やんばる野生生物保護センター内)で菊田さんの講演会が開かれ、菊田さんは「表面的な美ではなく有機的な循環の中で、やんばるの自然を表現したい」と作品に込めた思いを語った。
山原屏風は、和紙から全て手作り。裏側もシダの葉が写し出され、絵には墨のほかにニカワやベニサンゴを使うなど、自然の素材にこだわって作られている。
福島県出身の菊田さんが安田に来たのは8年前。やんばるアートプロジェクトに参加するために安田を訪れ、「ここで制作したい」と移住を決めた。菊田さんは「山原には子どものころにあった素朴な自然の姿が残っていた。懐かしい写真を見つけたような感覚だった」と話す。
当初、西洋絵画も手掛けていた菊田さん。客観的な視点で描く西洋絵画より、主体的な視点で描く東洋絵画にひかれて水墨画にたどり着いた。菊田さんは「自然の中に自分自身が溶け込む。時空を超えた自然観がある」と東洋絵画の魅力を語る。
菊田さんは「穏やかな気持ちを持って見えてくる物がある」と話し、自然を新たな視点で見つめ直す大切さを説いた。