教科書採択地区決定優先に 文科省が義務化方針


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教科書採択をめぐる地方教育行政法見直しのイメージ

 【東京】八重山教科書問題をめぐり、文部科学省が地方教育行政法(地教行法)を改定し、採択地区協議会の決定に従うことを義務化する作業を進めている。来年の通常国会で改正案を提出し、2015年度の教科書採択に反映させる考え。

下村博文文科相が15日に発表する。
 下村文科相は10月、名古屋市での講演で、竹富町の中学公民教科書選定に関し、採択地区内で教科書を統一するよう地教行法を改定すべきだとの考えを表明した。「勝手に違う教科書にしないよう、地方教育行政法の改正を行うことが国の責務だ」と強調していた。
 見直されるのは、現行の地教行法で教科書採択の権限者を「教育委員会及び地方公共団体の長」と定めている部分。竹富町のように石垣市や与那国町と採択地区が同一の場合、「教育委員会は協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」とした教科書無償措置法の規定を地教行法にも適用する。小規模の自治体の首長や教育委員会の採択権を認めず、採択地区の決定に従うことを法的に強制する方針だ。
 文科省は、八重山教科書問題の背景に、自治体の首長や教育委員会の権限を定める地教行法と、採択地区内で同一の教科書を使用するよう規定している無償措置法の矛盾があるとみており、地教行法の改定を急ぐことで、政府の意向に沿った教科書を使用させる狙いもある。
 文科省は10月、「特別法の無償措置法の方が優先される」として、県教委に対し、竹富町に保守色の強い育鵬社版教科書を使用させるよう是正要求を指示した。地教行法が改定されれば、現行法に沿って独自に中学公民の教科書を採択した竹富町に対し、法的根拠を盾にさらに圧力を強めるとみられる。
 文科省で法改定の作業を進めていた前政務官の義家弘介衆院議員(自民)は「竹富町の事例は歴史上唯一だ。同様の事例が他の地域で発生しないよう管理をきつくするのは当然だ」と強調した。