空自も思想調査 隊員が証言 「更新時に質問増」


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 航空自衛隊が防衛秘密を取り扱う航空自衛官に対し、思想・信条などに関する調査書類と、携帯電話通話記録の提供およびポリグラフ(うそ発見器)検査の同意を求める誓約書を提出させていたことが、15日までに分かった。琉球新報の取材に応じた自衛官の証言と、隊の内部資料で明らかになった。

同様の提出書類は海上自衛隊にもあるとして、特定秘密保護法案を審議する11日の衆院国家安全保障特別委員会で指摘されたが、小野寺五典防衛相は「承知していない」と答弁していた。
 航空自衛隊の書類は11日に衆院で指摘された「適格性身上明細書記入要領」と同一とみられる。宗教や政治などの所属団体、家族、親族、友人、交際相手などの氏名、住所、生年月日、職業、国籍などの記入を求めている。憲法が保障する思想・信条の自由を侵害する恐れが強い。
 証言した自衛官によると、所属する隊に提出された書類は5年の保存期間を経て廃棄する。その後、新たな書類に記載することで内容を更新するという。
 この自衛官は入隊歴十数年。思想信条に関する調査項目について「調査の回数を重ねるたびに質問項目が増えている。入隊当時は今よりも簡素だった。同様の調査は陸上自衛隊にもあるだろう」と指摘した。
 海外渡航歴の項目に中国や韓国への訪問歴を書くと、提出後に個別の聞き取り調査も追加で実施されるという。
 誓約書は例文を示され、全文手書きによる記入を求められる。ポリグラフ検査や通話記録の実際の提供については「私の周囲で聞いたことがない」と話した。
 特定秘密保護法案について、同自衛官は戦後、刑法に新設された凶器準備集合罪を例に挙げた。「凶器準備集合罪は暴力団抗争の未然防止を当初の目的としたが、デモの取り締まりなどにも後に用いられた。特定秘密保護法も成立から10年も経過すると拡大適用されるのではないか」と指摘した。
 「国防の視点から防衛の秘密は必要だ」と強調する一方、「報道の自由はきちんと担保されるべきだ。原発事故を特定秘密に指定し、30年後に指定解除されても、取り返しのつかない事態に陥っている可能性がある」と懸念を示した。