明治神宮野球 沖縄尚学が関東一に逆転勝ち、8強入り


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 第44回明治神宮野球大会は16日、神宮球場などで開幕して1回戦を行い、各地区秋季大会優勝の10校による高校の部で2年連続出場の沖縄尚学(九州地区)は関東第一(東京地区)を8―3で破り、準々決勝進出を決めた。沖尚の次戦は18日午前11時から、駒大苫小牧(北海道地区)と4強を懸けて戦う。

沖尚は先発山城大智が三回まで毎回の6安打を浴びて3点を先行されたが、四回から登板した久保柊人が追加点を許さなかった。攻撃は六回に2点、八回に1点を挙げて同点に追い付くと、九回には打線が爆発。5連続長短打などで一挙5点を加えた。11校出場の大学の部では近大工学部(中国・四国)が全日本大学選手権覇者の上武大(関東2)を2―0で破り、中部学院大(愛知・東海・北陸)八戸学院大(東北)とともに8強入りした。

◆久保気迫、圧巻の救援 打っても3安打3打点
 背番号4、先発の守備位置は右翼。公式戦初登板とは思えない、強心臓が勝利を呼び込んだ。0―3の四回から救援した沖尚の久保柊人が2安打無失点。「普段意識していることがこの大舞台でできて良かった」。涼やかな顔立ちをほころばせた。
 安定感に定評のあるエース山城大智の制球が落ち着かず、序盤から相手打線につかまった。比嘉公也監督は「久保は九州大会で攻撃の要だった。精神的にのっている」と山城を右翼へ回し、久保をマウンドへ送る大胆な策に出る。「エースが降りたからといってこのまま終わっていいチームじゃない。絶対に抑えてやろうと思った」と久保。重圧や不安はなく、あるのは勝利への気迫だけだった。
 中学時代は投手で活躍し、硬式少年野球の世界大会へ九州選抜として出場した実績もある。威力のある直球で押したかと思えば、変化球でタイミングをずらす。緩急を付けた投球で三塁を踏ませず、球速は最速141キロにも達した。「様子見で2イニングぐらいかな…」。そう考えていた指揮官も“うれしい誤算”に目を丸くした。
 打っても3安打3打点と大車輪の働きだった久保は「前チームと比べて個の力はないけど、チーム力で勝つことができている」と胸を張る。「油断することなく、優勝を目指して頑張りたい」。県勢初の戴冠へ、弾みをつける大きな一歩を刻んだ。(大城周子)

◆終盤にドラマ、電光石火の猛攻 九回1死から5連打
 ドラマは最後に待っていた。まず八回。沖尚は2死から西平大樹と安里健、主軸の連打でしぶとく同点に追い付く。この回から登板した相手右腕の動揺を誘うには十分だった。
 そして九回。1死から渕上大蔵が二塁打で出塁すると、続く与那覇廉の左越え適時二塁打で勝ち越しに成功。与那覇は七回の守備から入り、この試合初打席だった。チームを勢いづけた殊勲の1年生は「頭が真っ白だった。フルカウントまでバットを振れず『後がない』と最後は思い切り振った」と笑う。打線はさらに連打で鋭く攻め立て、3番手投手からも犠牲フライで駄目押しの8点目を奪った。電光石火の猛攻。スタンドのざわめきはしばらく収まらなかった。
 前半は長身から投げ下ろす相手先発の球に手こずり、五回までに残塁は八つを数えた。初出場だった昨年は好機に一本が出ず、接戦の末にサヨナラ本塁打で初戦負けを喫した。「似た展開だな」。比嘉公也監督の頭に苦い経験がよぎったが、幾多の修羅場をくぐり抜けた沖尚ナインは見事に劣勢を跳ね返した。
 「昨年の悔しさを知るメンバーが残っている。気持ちを一つにつないでくれた」と指揮官はうなり、渕上は「今年は絶対に勝ちたいという気持ちだった。この球場で勝てて自信が付いた」と言う。ミラクルではなく、確かな精神力が生んだ逆転劇だった。(大城周子)

関東第一―沖尚 四回から登板し、無失点と好投した沖尚の久保柊人=16日、神宮(大城周子撮影)
関東第一―沖尚 2本の二塁打と1打点を記録し、勝利に貢献した沖尚の3番西平大樹
関東第一―沖尚 9回沖尚1死二塁、砂川修の右前打で5点目のホームを踏む与那覇廉