「自分の行為も違法に」 南風原の男性、秘密法案で規制懸念


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黒塗りの資料を前に特定秘密保護法案の問題点などを訴える男性=与那原町内

 沖縄防衛局に基地従業員の情報などを公開請求し、その資料がほとんど黒塗りだった事実を報道機関に公表した経験のある、南風原町の男性(36)が、特定秘密保護法案の国会審議を強い不安を抱きながら見詰めている。

「(法律が制定されれば)自分の行為も違法になるかもしれない」と話し、政府の不都合な情報が表に出ない社会になってしまうことを危惧する。その一方で「それでも政府の理不尽さを社会に知らせることは大切だ。動かなければ何も変わらない」と強調し、反対の声を上げていく決意を表した。
 男性は反基地運動をしていることや、親戚に基地従業員がいることから返還予定の基地で働く従業員の処遇に不安を感じていた。再就職を支援するには職種別の人数の把握が必要だと考え、2010年に、米軍嘉手納基地より南の6基地で働く約4千人の職種と人数の情報公開を防衛局に請求した。
 個人情報の範囲外で公開を求めたが、資料は「保安上の危険をもたらす可能性がある」「米国との信頼関係が損なわれる恐れがある」などとして、施設名を除き、ほとんどが黒塗りにされていた。これに理不尽を感じ、報道機関に公表した。
 基地別の雇用者数は公表されており、個人情報ではない職種とその人数の情報が「保安上の危険に当たるわけがない」。そう思い、防衛局に不服申し立てをしたが結果は同じだった。
 法が成立すれば、情報公開制度そのものが後退するのではとの危惧もある。「地方自治体や米軍が持つ日本政府の資料にも規制が掛けられるのではないか」
 また、公務員が萎縮し、不祥事の発表や内部告発がなされなくなれば「自治体の“自浄作用”が低下する」とも。不安は尽きない。
 現状で“秘密”に当たらないような情報さえ隠されている中、秘密保護法が制定されると公的機関や個人への情報統制がさらに強まると感じる。男性は「今後は黒塗りの資料すら出なくなるかもしれない。このような形で取材に答えることも違法になるかもしれない。大事なのはこの問題を国際社会に問うことだ」と訴えた。(外間愛也)