県は、畜舎の悪臭や汚染水の低減に効果を発揮するオガコ(おがくず)の活用を養豚農家に勧めている。2012年度には「オガコ養豚」の経営実施マニュアルを作成。13年度からはオガコと排せつ物が同時に排出されるように、豚舎に傾斜をつける改修費用の補助事業を開始した。
沖縄は養豚農家の密度が全国で最も高いこともあり、10年度の畜産経営への苦情件数(人口100万人当たり)が全国平均に比べ約3倍に上るなど厳しい状況にある。地域の住環境に配慮した養豚業振興への効果に期待がかかる。
補助は13~14年度の「オガコ豚舎改修助成事業」で実施。補助率は7割で、13年度予算は7350万円。県内養豚農家の約5%に当たる18戸への導入を目指す。豚舎の改修のほか、オガコや排せつ物の保管庫の増改築、搬出用作業機械の購入などにも活用できる。
豚舎に緩い傾斜をつける「セルフクリーニング方式」は、県畜産研究センターが開発した。餌場と反対側に排せつの場所を分け、豚の習性を利用して排せつ物を蹴り出させる仕組みだ。県外ではオガコを30センチ~1メートル敷く「発酵床式」が主流だが、5~10センチ程度しか敷かないため、発酵熱による温度上昇を抑制し、亜熱帯の沖縄に適しているとされる。
県内では近年、都市化が進む南部地域などで豚舎の周囲に住宅が立地し、悪臭への苦情が課題となっている。10年度の苦情件数の全国平均は17・1件だったのに対し、県内は45件あった。
県が09~11年度の「オガコ養豚衛生対策推進事業」を活用して作成した経営マニュアルによると、オガコ養豚は水洗方式と比べて悪臭とされるアンモニアを51%、イオン化合物類は60~100%、低級脂肪酸類は91~100%減少させる。
現在主に使用されているのは1立方メートル当たり2千~2500円のオガコで、県は台風で倒れた街路樹を使うなど安定供給と低価格化の方法を模索している。
県畜産課の安里左知子課長は「水洗方式の方が向いている豚舎もあるが、オガコを使うと劇的に臭いがなくなる」と効果を認める。問い合わせは県畜産課(電話)098(866)2269。
(長嶺真輝)