那覇市は今年3月に一括交付金を活用し、市内全コンビニ118カ所(当時)へ自動体外式除細動器(AED)を導入した。設置されたAEDが実際に6月に人命救助で活用されたほか、緊急時に市民からの要望でこれまで3回貸し出された。
人命救助の実績が出たことなどから、全国や県内自治体から市消防本部に問い合わせが相次いでいる。県内では沖縄市が一括交付金を活用して近く市内全コンビニ43カ所に導入する。全国でも千葉県船橋市が設置するなど、行政によるコンビニ導入の動きが広がっている。
救急医療に携わる医師からは「コンビニにAEDが必ずあるという状況は非常に効果的だ。県内全域に広がってほしい」と訴えている。
市消防本部救急課はAEDの一般普及を検討した際、24時間営業で多くの人が出入りするコンビニへの設置が有効だと考えた。既にコンビニへの設置を実施していた静岡県三島市の事例を参考に、一括交付金の活用を検討した。
一括交付金は沖縄の特殊事情が要件となるため、観光立県沖縄で多くの観光客が滞在していることを理由に挙げた。観光客が安心して滞在するためにもAEDのコンビニ設置が有効だとして、国から約3900万円の事業費を得た。設置したAEDは毎日自動で点検作業が行われ、PHS通信で市消防本部が管理している。
今年6月には心肺停止状態で路上に倒れた小泉昇さん(当時58)=埼玉県=がコンビニ設置のAEDによって助けられた。小泉さんは現在、健康を取り戻し、後遺症もないという。
沖縄赤十字病院の新里譲循環器内科部長によると、一般の人が心肺停止の人に遭遇した場合、約半数が心臓マッサージを行い、AEDを使用した事例は2%にすぎなかったという。AEDで処置していれば救命できたとみられる事例が多く、後遺症も低減できるという。
新里医師は「AEDが必要な緊急時、コンビニに行けば必ずあるという認識が市民に浸透すれば、救命効果は大きくなる。那覇市だけでなく県内全てのコンビニに一日も早くAEDを設置してほしい」と訴えた。