竹富教科書、県教委は是正要求に否定的


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 竹富町教育委員会が石垣市と与那国町の両教委と異なる教科書を採択したことで国が県教育委員会(新垣和歌子委員長)に竹富町への是正要求を指示した問題で、県教委は20日、県教育庁で定例会を開き、対応を協議した。

委員らは竹富町の教育現場で問題が生じていないことや、同一教科書を強いると今後地域で公正な審議ができなくなることなど是正要求に否定的な見解を示した上で、現時点では結論を出さず継続協議とすることを決めた。国地方係争処理委員会への不服申し立てはしない。
 県教委は審議の経過報告(中間報告)を3枚にまとめ、定例会で配布した。報告は、無償教科書措置法の対象とならない竹富町では寄付により教科書が給付されていることから「大きな問題は生じていない」と強調。是正要求した場合は「竹富町に同一教科書を強いることになり、今後、八重山地区で信頼に基づく公正な審議ができなくなる。教育環境に悪影響が出る」と懸念を示している。
 さらに地方分権一括法の付帯決議で「是正要求は地方公共団体の自立性に極力配慮する。事務処理が公益を害し著しい支障が生じている場合など限定的に発動する」と記されていることに注目。「今回の是正要求は付帯決議を反映していない。安定している竹富町の教育環境をかえって混乱・停滞させる」と危惧する。
 委員の意見として「両教科書とも検定に合格しているので、一方を違法にできない」「地方分権の流れに逆行する」などを挙げ、最後に「公正な審議による解決を望んでいるので、結論は出せていない。検討を重ねていく」とまとめた。
 定例会で、富川盛武委員は国の是正要求を「理不尽だ」と強く批判した。石嶺伝一郎委員は「信頼で物事を解決するという仕組みを子どもたちに見せることは大切だ」と訴えた。

<是正要求の指示に対する県教育委員会の中間報告>
◎審議経過
竹富町では教科書が給付されており、大きな問題はない。安定している教育環境をかえって混乱させる
竹富町に同一の教科書使用を強いると、今後信頼に基づく公正な審議ができない
地方分権一括法の付帯決議「是正要求は地方公共団体の自主性・自立性に極力配慮」に反する
◎各委員の意見
両教科書は検定に合格している。一方を違法とするのは合理性がない
地域分権の流れに逆行する
「教科書改革実行プラン」が掲げる「採択地区の決定単位は『市町村』」に反する
◎結論
公正な審議による解決を望み、結論は出せず。国の動向を見て引き続き検討する