復帰前の空撮、米軍基地は黒塗り 秘密法で時代逆戻り


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 特定秘密保護法案の国会審議が大詰めを迎える中、県議の渡久地修さんは米軍基地が黒く塗りつぶされた琉球政府作製の空撮地図をインターネットなどで紹介し、同法案の危険性に警鐘を鳴らす。「この法律が成立すれば、米軍基地に関する全ての情報は隠される。この地図のように『黒塗り』の時代に逆戻りだ」と訴えている。

 渡久地さんが紹介しているのは、復帰前の1970年から71年にかけて琉球政府が撮影した沖縄県全土の空撮地図。地図の米軍基地に当たる部分は全て黒く塗りつぶされている。
 渡久地さんが那覇市議を務めていた97年ごろ、モノレール建設の資料地図として那覇市長室の壁に貼られていたという。「特定秘密保護法案の審議が国会で始まったころ、この地図の存在を思い出した」と話す。
 渡久地さんが収集した資料「広報おきなわ」(70年第4・5号)によると、日本政府が「国土資源開発」を目的に「国土基本図」として作製した。県外では60年代から国土地理院が航空撮影を開始し、70年の時点で国内73%の作製が完了していたという。
 復帰前の沖縄では米民政府から「軍事上の理由」で空撮の許可が下りず、県外に比べ約10年作業が遅れた。復帰直前に琉球政府の委託を受けた「ライアン・アソシエーツ琉球社」が撮影を実施した。
 同地図は復帰まで米軍が使用していた那覇飛行場(現那覇空港)や、現在も残る普天間飛行場、嘉手納基地などが黒く塗りつぶされている。
 インターネットで「グーグルマップ」が提供する航空写真では、県内の米軍基地を自由に見ることができる。渡久地さんは「特定秘密保護法が成立すれば、政府は堂々と基地に関する情報を隠すだろう。インターネットでの閲覧もできなくなる恐れがある」と懸念する。「沖縄は県民のすぐそばに米軍基地が存在している。基地の情報は県民の生活や安全に直結する。そこに目を向けることが『犯罪』になりかねない法案を決して許してはならない」と力を込めた。(赤嶺玲子)

1970年~71年にかけて撮影された那覇市の空撮地図。当時、米軍が使用していた那覇飛行場が黒く塗りつぶされている
渡久地修県議