組踊台本に沖縄文字 東風平中、舞台公演で活用


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 【八重瀬】日本語の五十音では正確に発音できない言葉もあるうちなーぐち。従来の表記では朗読が難しく、正しい発音も学習しづらいため、うちなーぐちの普及・継承の妨げとなっている。

解決の糸口を探ろうと、八重瀬町立東風平中学校3年生の総合的な学習の時間で取り組む「組踊」の授業に、沖縄語研究家が考案した23の新たな「沖縄文字」と五十音などを組み合わせた特別な台本を実験的に活用した。生徒らは16日、八重瀬町を舞台にした組踊「身替忠女(みがわりちゅうじょ)」を町中央公民館で披露した。
 自身も組踊実演家で、分かりやすい表記の台本を求めていた、町教育委員会の神谷武史さんの提案で沖縄文字を用いた台本を実験的に使用することになった。台本は沖縄語を話す会「東京」事務局の国吉真正さん(76)=神奈川県=が書いた。沖縄文字は国吉さんの友人の船津好明さんが約30年前に考案した。
 生徒らは7月から練習を始めたが、当初渡された台本は従来の五十音表記で「ひらがなで書かれていたので、分かりにくかった」(生徒)という。その後、国吉さんが9月に台本を書き上げ、発音を教えるため来県した。新たな台本は生徒から「読みやすかった」「(うちなーぐちの)リズムが分かるようになった」と好評を得た。
 沖縄文字の表記法はこれまでいくつか提案されているが、今回の台本では一音を2字や3字のひらがなで表さず、1字で示した。国吉さんは「従来の表記で読んでいたら、せりふも頭に入らない。子どもたちの学習負担が少ないよう、すらすら読めるようにした」と解説する。
 公演で生徒らは全編うちなーぐちのせりふを堂々と読み上げ、立ち回りもしっかり見せた。出演した宮城湧大(ゆうだい)さんは「最近うちなーぐちを話す人が少なくなり深刻な問題となっている。自分たちが次世代につなげたい」と力を込めた。
 公演では国吉さんの講演会や舞踊家の演舞もあった。
英文へ→Okinawan pronunciation added in Kumiodori play script

中学生が全編うちなーぐちで臨んだ組踊舞台=16日、八重瀬町中央公民館
国吉 真正さん