県内でケーブルや専用機器に触れることなく、ソフトウエアで1カ所からネットワークの設定や制御などを実現する新しい技術の実用化を目指す取り組みが進んでいる。「SDN」という技術で次世代の情報通信技術(ICT)として期待されている。
うるま市に設立した社団法人沖縄オープンラボラトリ(伊藤幸夫理事長)が主導し、活用に向けた基盤作りに取り組んでいる。来年度にも試行を始め、同分野の技術革新で国際的に先行を図る狙い。
従来のネットワークは通信機器の1台ずつが独立し制御ソフトやデータ転送機能を持っている。どう接続するかなど設定作業はそれぞれの機器に必要で、ネットワークの構成は固定的だった。そのため、複数の専門会社が混在し、それに合わせた複雑な装置構成や機器ごとの設定となる現状では、稼働までの時間がかかるなど使い勝手などが課題となっているという。
SDNは制御機能を分離し、どの通信機器にどのような動作を指示するかなどを1カ所で集中管理する仕組み。費用削減のほか、多様化するニーズに柔軟に対応できるとして注目されている。
沖縄オープンラボは通信大手のNTTコミュニケーションズ(東京)、日本電気(同)、イイガ(同)の3社が設立した。年度内に国内外から30の企業、学術機関が入会する見込みで、各企業が活用できるよう標準化したシステム開発に取り組んでいる。
インターネット経由で情報を処理するクラウドコンピューティング技術が普及し、データを蓄積、管理するサーバーが仮想化される中、沖縄オープンラボはクラウド技術と融合させたネットワーク仮想化の実現を目指す。2015年度にはアジアに近い沖縄の地理的優位性を生かし、アジア地域との連携を本格化させる。
沖縄オープンラボの池田治巳事務局長は「研究成果は原則公開し沖縄から技術を発信したい。この分野は変革が遅れているが、実現すれば費用の削減にもつながり、技術革新の幅が広がる」と力を込めた。
26日午前10時からうるま市の沖縄IT津梁パークを主会場に、琉球大学や東京大学、大阪大学の3カ所で同時中継するSDNに関するセミナーを開く。参加無料。問い合わせは同ラボ(電話)098(989)1940。(謝花史哲)