仲井真知事「9割方やりたい」 重粒子線施設に前向き


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仲井真弘多知事(左)に、重粒子線治療施設導入の可能性を検討した報告書を手渡す県医師会の宮城信雄会長=22日、県庁

 仲井真弘多知事は22日、県庁で県医師会の宮城信雄会長、玉城信光副会長と面談し、がんの病巣にピンポイントで放射線を当てて治療する重粒子線がん治療施設の導入可能性の中間報告を受け「県もその方向でいきたい」と実現に前向きな姿勢を示した。

その後、記者団にも「9割方はやりたい。やった方がいいと思っている」と述べた。知事の発言を受け、県企画部はさらに詳細な調査にかかる費用を次年度の予算編成に盛り込む方針だ。宮城会長と玉城副会長は、早ければ2017年にも運用開始したいとの考えを示した。
 中間報告は、県医師会を中心とする検討協議会が県から委託され、まとめた。安定運営には年間400~500人の利用患者が必要とし、うち県民は150人で、その他は他都道府県やロシアなど海外から医療ツーリズムと連動させた呼び込みを想定している。
 県は重粒子線治療施設に連動させて観光や先端の科学技術の発展が見込めると期待し、沖縄振興に有益とみている。一方、県内のがん患者の中からは「経済的に苦しい患者が多く、(高額な)医療費を出せるのは一部」と採算性を疑問視する意見や「宮古、八重山の病院に放射線治療機器を整備すべきだ」などと地域医療の充実が先との見方もある。海外からの利用患者確保など不透明な要素も残る。
 報告書では、立地の候補地を15年3月までの返還が予定されているキャンプ瑞慶覧の西普天間返還跡地(宜野湾市)とし、公設民営を検討するとした。初期投資として約154億円を見込み、一括交付金を活用する。沖縄科学技術大学院大学や国内機器メーカーと連携し、新しい重粒子線加速器の研究も可能としている。西普天間返還跡地は、文化財調査などを経て返還が予定されているため、開設時期は流動的な面もある。
 重粒子線治療は局所療法で固定がんの肺がん、前立腺がん、肝臓がん、骨軟部肉腫などのがんが対象で、メスを使わないため体への負担が少ない。一方、保険が適用されない先端医療で、約300万円の高額治療費がかかる。