辺野古土砂・外来アリ懸念 害虫根絶 苦難続き


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 政府が進める名護市辺野古への米軍普天間飛行場代替基地建設に使用する埋め立て土砂(岩ずり)の採取先である山口県の防府市や周南市などの周辺で、移動や飼育が法律で原則禁止されている特定外来生物のアルゼンチンアリが繁殖している。県内の関係者は「外来生物が沖縄に一度入れば根絶は困難」などと不安を強めている。

県内では、海外から侵入したミカンコミバエやウリミバエなどの特殊病害虫を根絶してきた。現在も天然記念物のヤンバルクイナなどを食い荒らすマングースの捕獲が続けられており、外来生物への対策に悩まされてきた。
 県自然保護課の担当者は「外来生物が一度入ってしまうと、根絶は困難で多大な労力が必要となる。できる限り入ってこないようにしないといけない」と話している。
 1919年、マンゴーやパパイアを食べるミカンコミバエと、ゴーヤーやヘチマを食べるウリミバエが県内で確認された。那覇植物防疫事務所によると、いずれも植物防疫法で移動も輸入も禁止されている害虫だ。根絶宣言が出されるまで県内農家は対象作物を原則、県外に出荷できなかった。県内で根絶事業開始から根絶宣言が出されるまでミカンコミバエは10年、ウリミバエは22年かかっている。
 紅イモやサツマイモを食害するアリモドキゾウムシも、久米島での事業開始から根絶宣言が出されるまで20年かかった。那覇植物防疫事務所は「害虫を根絶するには、時間も労力も相当要する」としている。
 ネズミやハブの駆除を目的に1910年に沖縄に入ってきたフイリマングースは徐々に増え、天然記念物のヤンバルクイナなどが食べられる被害が続いている。県と環境省は「緊急性が高い」(県自然保護課)として、沖縄本島北部で、フイリマングースの捕獲事業を進めている。
 生態系への影響にとどまらず、人的被害も出ている。90年代以前に、ショーやハブ酒の材料として大量に輸入された毒ヘビのタイワンハブも本島北部を中心に繁殖が確認されている。県衛生環境研究所によると、市町村の毎年の捕獲事業でも数百匹単位で捕獲され、これまでに少なくとも15人がかまれる被害に遭っているという。(当銘寿夫)