サンゴ移植 再生へ 宮古島・海中公園、工事で死滅状態


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移植予定のサンゴ片

 【宮古島】宮古島市は12月中にも、工事の影響でサンゴが死滅状態となった海中公園のガラス窓前の海域で、サンゴの移植試験を行う。現場は波が強く、関係者によると同様な場所でのサンゴ移植は全国的にもあまり例がないという。一度は多くが失われたサンゴ礁をよみがえらせることができるか、注目される。

 海中公園はガラス越しにサンゴや魚の生態が観察できる海中トンネルなどがある観光施設で、2011年に完成した。だが工事後、周辺でサンゴの白化や死滅が見られるようになった。
 同公園建設工事が原因でサンゴが死滅したとし市内に住む猪澤也寸志さんが同年、国の公害等調整委員会に原因裁定を申請。12年に市は工事との因果関係を認め、公園周辺でのサンゴ移植・再生やオニヒトデの駆除、専門家を交えた専門委員会の設置などを約束した。
 市によると、ことし移植するサンゴは、養殖しているサンゴの苗143片のうち、3分の2にあたる100片程度を予定しており、移植方法などの検討を行う。
 来年度以降もサンゴの移植を続ける。今後の移植用サンゴ確保のため、県の特別採捕許可を得てサンゴの一部を切り取って養殖することや、6月ごろのサンゴの産卵期に卵を採取し育成することにも取り組む。
 専門委員会の委員でサンゴの移植に詳しい県水産海洋技術センターの鹿熊信一郎班長は、水産庁が沖ノ鳥島で行っている事例が参考になるとし「宮古に合った新たな手法もあるかもしれない。工夫しながらよりよい環境づくりを進めたい」と語った。
 裁定申請した猪澤さんは「サンゴ再生のスタートラインに立った。ガラス窓前の再生はとっかかりにすぎない。専門委の知見を結集し取り組んでほしい」と話した。