名護市辺野古への新基地建設に向け、沖縄防衛局が2007年から12年にかけて実施した環境影響評価書(アセスメント)の英語版要約書の内容が、21日までに分かった。今年2月に日本政府が米国防総省に提出していた。要約書では「環境保全は不可能」とした県知事の結論をはじめ、新基地建設に対する地元の懸念は記載されていない。
さらに辺野古や大浦湾近海でのジュゴン生息を裏付ける調査結果などの情報も盛り込まれていない。同書を入手した環境市民団体は「建設に都合のいい部分に焦点を当て、環境保全に必要な情報が薄い。これでは米側が建設に『問題はない』と誤認しかねない」と批判する。
03年に始まった米ジュゴン訴訟を追う沖縄・生物多様性市民ネットワークなどが入手した。米連邦地裁は08年、国防総省に米国国家歴史保存法(NHPA)順守と新基地建設のジュゴンへの影響を示すよう求めた。米側の判断材料として必要な環境アセスの手続きが当時進行中だったため、一時中断。12年のアセス完了を待って日本側が作成、提出したとみられる。
698ページの要約書では、6割を知事や住民意見とそれに対する沖縄防衛局の見解に割く一方、環境への影響についての記述は少ない。建設目的や基地機能を紹介する168ページの章をほぼ丸ごと記載している。辺野古周辺でのジュゴン生息を示す写真や地図などが添付された234ページもの調査情報の記載は一切なかった。
多様性ネットの吉川秀樹氏は「影響や保全上重要な部分が抜け落ちている。正確でもなく不十分な情報伝達で、米側の判断が誤った方向に行きかねない」と指摘した。(石井恭子)