第41回新報短編小説賞は照屋さんの「キャッチボール」


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 第41回琉球新報短編小説賞の受賞作は照屋たこまさん(28)=うるま市、家庭教師=の「キャッチボール」に決まった。佳作に儀保佑輔さん(27)=浦添市、塾講師=の「君のための伊良部」を選んだ。

 45編の応募作品を2次にわたる予備選考で5編に絞り、芥川賞作家の又吉栄喜、文芸評論家の湯川豊、早稲田大学教授の勝方=稲福恵子の3氏が20日、東京都内で最終選考を行った。
 「キャッチボール」は、甲子園に出場してプロ野球選手になるという夢に挫折した主人公の三弦(みちる)が、目標もなくうっ屈した日々を送る中、地元の先輩からエイサーの地謡を押し付けられる物語。三線職人の父親から借りた三線で練習を重ねるうち、うとましく距離を置いてきた父親への感情に次第に変化が表れる。
 選考会では、又吉氏が「父親が三線に打ち込む力に感化されて父と和解するテーマ。文章の流れはよどみなく、まとまった作品世界を形成している」、湯川氏は「生きがいを失った青年が三線を通して父親を再発見するというストーリーの流れは、古くて新しい小説を生み出した」、勝方氏は「結末の数行がタイトルの意味を深めて良かった。破綻のない描写の中に沖縄がさらりと表現されて好感が持てる」と評価した。
 贈呈式は来年1月24日に那覇市の琉球新報泉崎ホールで開催する。