【島人の目】日本式正月へのUターン


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 大みそかから新年にかけてのイタリアはひどく騒がしい。クリスマスは日本の正月のように家族で静かに祝うのだが、新年は親しい友人や仲間や朋輩(ほうばい)らと共に飲み、食い、歌い、花火や爆竹を鳴り響かせてにぎやかに過ごす。まるで中国の正月のようである。

 花火や爆竹は中国が発祥とされるが、13世紀以降はここイタリアのフィレンツェでも花火や火薬製造が盛んに行われていたから、それがけたたましくとどろくのは中国と同時並行的に生まれた習慣なのだろう。
 クリスマスを厳かに、新年を騒々しく祝うのは、実はイタリアに限らずキリスト教国の普通の光景。それに加えてこの国では、大みそかの夜に騒ぎつつ「チェノーネ」と呼ばれる大量の食事を取る習わしがある。わが家ではことしからこの習慣をやめた。
 わが家と言っても、息子2人はイタリア式に彼らの友人たちと過ごすから、夫婦2人である。長い間夫婦2人で大勢の友人を招いたり、また招かれたりして正月を過ごしてきた。それをやめて妻と2人で熱かんを飲みながら静かに新年を過ごすと決めた。
 僕は若いころから花火や爆竹の音をうるさく思い、夜更けの大宴会を少しうっとうしく感じ続けてきた。そろそろこのあたりで大みそかから新年は日本式に静かに過ごさないか、とイタリア人の妻に提案したら、意外にあっさりと賛成してくれた。大みそかの騒ぎは彼女もやっぱり少し疲れるのだという。
 そうやって日本式に過ごしてみて、友人らとにぎやかに祝いたくなったら、また元に戻せばいいさ、と僕は柔軟に考えているのだけれど。(仲宗根雅則、TVディレクター)