パナリ焼やジュゴン詳述 「新城島」刊行


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発刊された竹富町史第5巻「新城島」

 【竹富】竹富町は9日、竹富町史第5巻「新城(あらぐすく)島」の刊行を発表した。上地島と下地島の2島で構成する新城島(通称パナリ)の歴史、自然、文化などを14章立て710ページにまとめた。

町史編集委員会によると、新城島についてまとめられた文献はほとんどなかった。図書館や古本屋に分散する資料を集めたり、島出身者へ聞き取りしたりして編集したという。
 新城島は、19世紀半ばまで作られていた素焼きの「パナリ焼」や、琉球王朝時代の上納品として同島だけに捕獲が許されていたジュゴン(ザン)など、竹富町のほかの島にはない独特の文化がある。「パナリ焼とザン」は1章を使って詳述した。
 同島は1930年代に約700人の人口があったが、戦後に減少。集落は廃村となり、現在の人口は上地島が12人、下地島が2人となっている。しかし、豊年祭をはじめとする祭事は受け継がれ、上地島の集落の町並みは保全されている。
 町史編集委員会の登野原武委員長は「なぜパナリだけがジュゴンの捕獲を認められていたかは謎だが、おそらく琉球王朝の認可以前から捕獲して食べていた歴史があったのだろう」と推察。「パナリの資料がほとんどないのは、人頭税などで波(は)瀾(らん)万丈だった先人に暇がなかったからだろう。みんなの力で素晴らしいものができたと思う」と刊行を喜んだ。
 本は1冊3150円(税込み)。問い合わせは町史編集係(電話)0980(88)7220。