バイオ水素技術研究所(那覇市、藤澤愼悟社長)は、廃糖蜜で水素を生産し発電するプラントの製造や電力供給システムの開発に取り組んでいる。全国初の試み。15日までに、実験プラントと制御システムを設計、製造した。本格的な工場の建設に向け、規模が大きくなった場合の影響など検証作業を進め、新エネルギーとして注目される水素電力の実用化を目指す。
水素は糖蜜の微生物発酵で生産する仕組み。横浜国立大学名誉教授の谷生重晴氏などの技術協力を得て、安定的に水素を生産できるプラントを設計、製造することに成功した。谷生氏は水素を出す微生物を約30年研究し、2004年に水素の発生に優れた微生物を発見した。
実験プラントは発酵用タンクが200リットルの容量で、水素と酸素を反応させて電気を取り出す燃料電池を設置した。発酵温度などを制御するシステムも独自に開発した。糖蜜8キログラムから1立方メートルの水素を生産し、1キロワット時を発電できる試算だ。現在、生産効率の向上やコスト軽減を図るため実証実験を重ね、データ蓄積を進めている。同社は南北大東村などサトウキビ生産地である県内離島への導入を提案する。両村の場合で、全世帯の年間電力量を、同村から回収する廃糖蜜で賄える可能性があるという。
藤澤社長は「まだ課題はあるが、実験段階で水素1立方メートルの生産コスト約60円を半分に落とせることは可能。廃糖蜜を有効活用できれば、農業支援も図れる。沖縄で新しい技術を確立し、エネルギーの地産地消を実現させたい」と意気込みを語った。(謝花史哲)