「ストライク!」。右手を高く突き挙げた審判の声が球場に響き渡る。5日、沖縄市のコザしんきんスタジアムで行われた九州大学野球沖縄予選の始球式で球審を務めた島袋幸榮さん(66)=読谷村=は脳梗塞で倒れて以来、5年ぶりにコールした。「大好きなグラウンドにもう一度戻ってこられた」。島袋さんは、万感込み上げた表情で語った。
島袋さんは1973年からアマチュア野球の審判として活動。87年、夏の甲子園にも派遣され、県の大学野球で10年間審判長を務めるなど、県内外で活躍していた。
しかし、2009年に病が島袋さんを襲った。脳梗塞だった。右半身にまひが残り、右腕や膝が思うように動かない。大きな声も出しにくくなり、審判としてグラウンドに立つことができなくなったが、「人生の支え」と語る野球への情熱は尽きなかった。大会があれば、リハビリの合間に観戦した。
今回の始球式は、島袋さんの県大学野球連盟功労者表彰に合わせて行われた。始球式を終えた島袋さんは「気持ち良かった」と笑顔を見せた。
マウンドには孫の菊地塁君(16)=沖縄尚学高2年=が立った。父親と島袋さんの影響で野球を始めた塁君は野球部に所属し、レギュラーを目指している。島袋さんのジャッジを初めて見た塁君は「おじいちゃんが先に(審判として)甲子園の土を踏んだ。僕も甲子園で野球がやりたい」と祖父の姿をまぶしそうに見つめた。
(荒井良平)
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