『世変わりの後で 復帰40年を考える』 今を問い続けていく扉


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『世変わりの後で 復帰40年を考える』うまんちゅ定例講座編 沖縄国際大学公開講座委員会・1500円+税

 2012年は、沖縄が日本に復帰して40年という節目の年であった。当時、県内外ではさまざまな「復帰」に関わる催しが開かれたこともあり、それらに参加された方も多かったのではないだろうか。本書は、沖縄国際大学が主催した公開講座(うまんちゅ定例講座、全10回)に若干の補遺を加えつつ一書になしたものである。

 本書の前半は、「復帰」を考える前提となる過去の歴史的な「世変わり」(1609年の島津侵入、1879年の琉球処分、1945年の沖縄戦、戦後の米軍支配)が、近年の研究成果に基づいて描かれている。
 島津侵攻事件以降に琉球はいかにして近世琉球へと転換し(田名真之)、琉球処分にいかなる対応を見せていったのか(赤嶺守)。さらに、沖縄戦からの復興(吉浜忍)と米軍支配下における自治の模索(鳥山淳)がどのように行われていったのかが描かれている。これらによって琉球から沖縄、そして復帰へと至る時代を知ることができよう。
 後半は、繰り返された「世変わり」を通じていたった「復帰」以後の40年が、さまざまなテーマから語られていく。
 例えば、開発と環境保護を切り口にダム開発や埋め立てによって沖縄の風景が一変していくさま(宮城邦治)、開発の進展とも関係する文化財の推移と世界遺産の登場(上原靜)、沖縄を特徴付ける言説となっている出生率の高さと女性(澤田佳世)、祭祀(さいし)と信仰世界の急激な変容(稲福みきこ)、歴史(記憶)を継承していくための歴史教育(藤波潔)、「先住民族」をめぐる運動や自己決定権論と沖縄の現状(石垣直)などが読みやすく取り上げられている。
 すでに「祖国復帰」としての「復帰」は、40年の経過の中で大きく変化してきたと評者は考える。その意味では、現在へと通じる「復帰」をあらためて問い直す意義も高まってきていると言えよう。本書によって今を問い続けていくためのさまざまな扉を開いてみるのも良いのではないだろうか。ウマンチュに一読を請いたい。
 (山田浩世・日本学術振興会特別研究員PD)
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 うまんちゅ定例講座 地域の人々と交流しようと沖縄国際大が設けた公開講座の一つ。2012年の復帰40年を機に「世変わりの後で―復帰40年を考える」をメインテーマに設定した。

世変わりの後で復帰40年を考える (沖縄国際大学公開講座)
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