『沖縄の飛躍発展に向けた提言集』 同時代に生きる回顧と展望


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『沖縄の飛躍発展に向けた提言集』仲里嘉彦監修 万国津梁機構・1500円

 本の執筆者は、最高年齢87歳を筆頭に40代まで計12人の多彩なメンバーが並び、面白い構成になっている。同時代に生きる各年代の考え方を知るにも好材料だ。執筆者は沖縄の政財界を代表して実績を残した人や現職国会議員、自治体の首長という顔ぶれで、いずれも実体験を踏まえた証言、回顧、展望となっている。

 具体的には、比嘉幹郎氏は「日米地位協定に向けて」の項で「現行の日米地位協定は、協定における日米関係が平等でないということと、環境問題への配慮が不十分で時代遅れになっている」と指摘している。
 また、国土庁長官や沖縄開発庁長官を経験した上原康助氏は「オスプレイ配備NO~沖縄の本気度が問われる~」と題する発言の中で「問題解決には政権党との太いパイプと人脈を持たなければ実現は難しいということを実感した」として、これらの問題解決は超党派で根気強く続ける必要性を強調している。
 さらに沖縄国際大学教授の富川盛武氏は沖縄21世紀ビジョンについて述べている。アジアとの近接性、地政学的優位性と合わせて健康長寿、快適環境などのソフトパワーの優位性を臨空産業と県産品をキーワードにして、いかに組み合わせるかであるとして沖縄県の発展について語っている。
 参院議員の島尻安伊子氏は、普天間飛行場の移転先は「県外」と公約に掲げていたことに触れ、名護市辺野古への移設容認論に変質した経緯を自ら説明している。ただ率直に言って、なぜ変質したかはよく理解できない。さまざまな角度の情報を基に検証する必要があるだろう。
 この本の監修者である仲里嘉彦氏は多くの著書があり、法人を設立し、精神的自立、経済的自立、知的水準の向上を3本柱に、平和で豊かな地域社会の構築を図るため精力的な活動を展開している。
 この法人が実施した講演録を加筆修正して再編したものが、この本だ。12人それぞれの執筆者が愛郷心を込めて「沖縄の自立」を語った言葉を“世直しの発言”と受け止めたい。同時代に語られた、重みのあるそれぞれの証言を末永く残したいものである。
 (上原文一・沖縄県地域づくりネットワーク運営委員、NPO法人理事長)
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 なかざと・よしひこ 1938年、本部町生まれ。産業新聞社を経て春夏秋冬社創立社長に就任。2011年9月から万国津梁機構・一般社団法人設立理事長。