「捨て石」またか 沖縄戦体験者、「戦争の道」懸念


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 集団的自衛権の行使容認を目指し、安倍晋三首相が憲法解釈見直しの意欲を表明した15日、沖縄戦体験者や米軍基地周辺で暮らす住民は「戦争への道を再び歩むのか」と懸念した。

42年前に日本復帰を果たし、日本国憲法が沖縄に適用されたのと同じ日に、平和主義の日本は新たな岐路に立った。5・15平和行進の全国からの参加者は、「憲法と民主主義を踏みにじっている」と危機感を示した。
 集団的自衛権の行使容認を示す、政府の姿勢に対し、沖縄戦体験者からは15日、「武力を伴う平和には反対」などと憤りの声が上がった。
 渡嘉敷島で「集団自決」(強制集団死)を生き延びた金城重明さん(85)=那覇市=は「海外で武力行使できるようにするのは、(不戦を掲げる)憲法の本質を変える行為だ」と指摘した。「武力行使の先にあるのは戦争だ。戦争を体験した者として、武力行使に反対だ」と述べ、政府の姿勢に懸念を示した。
 沖縄戦時中、戦地となった本島南部を逃げ回り、2人の子や夫など肉親計11人を失った安里要江(としえ)さん(93)=北中城村=は「また戦争の道を歩むのか」と憤った。
 憲法をめぐる政府の動きが、心の中で戦争を推し進めた戦前の軍国主義教育と重なる。戦争体験の語り部と憲法9条を守る活動を続ける安里さんは「国民をだまそうという政府の動きに警鐘を鳴らし、同じ悲劇を後世に繰り返させてはならない」と強調した。
 野戦病院の負傷兵看護のため戦場に駆り出された、県立第二高等女学校出身者らでつくる白梅同窓会の中山きく会長(85)は「武力を伴う平和のつくり方に、ずっと反対してきた。国際的な状況が厳しくても、乗り越えるのが政治じゃないの」と異議を唱える。
 秘密保護法などを短期間に推し進めてきた安倍首相に対しては、「持ち前の弁舌で巻き込んでどんどんやってるでしょ。心配なのは、若い人が巻き込まれるのではないかということ。もっと若者に分からせるように伝えなくてはならないのだけれど」と今後を心配した。
英文へ→Prime Minister Abe’s re-interpretation of the peace clause: Okinawan people concerned changes could provide a way to war