てるクリニック8強入り 都市対抗野球九州予選第1日


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 社会人野球の第85回都市対抗大会九州地区予選兼第53回九州選手権大会第1日は31日、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇と浦添市民球場で1回戦4試合が行われ、県第3代表のてるクリニック(那覇市)が九州三菱自動車(福岡市)に5―4で競り勝ち、8強入りを果たした。

てるクリニックは1日、4強を懸けて熊本ゴールデンラークス(熊本市)と対戦する。県第2代表のビッグ開発ベースボールクラブ(那覇市)は、西部ガス(福岡市)に1―8で敗れた。ビッグ開発は2日から、九州地区第2代表を目指して敗者復活トーナメントに回る。三菱重工長崎(長崎市)は鹿児島ドリームウェーブ(鹿児島市)を1―0で下した。苅田ビクトリーズベースボールクラブ(福岡・苅田町)は、新日鉄住金大分クラブ(大分市)を、延長十回の熱戦の末に6―3のサヨナラ勝ちで破った。県第1代表で1回戦をシードされた沖縄電力(浦添市)は、1日に西部ガスと対戦する。

◆企業チームに初金星 八回逆転、地元応援が力に
 県第3代表のクラブチーム・てるクリニックが初めて企業チームを破る快挙を見せ、地元初開催の開幕戦を飾った。照屋均監督は「正直勝てるとは思っていなかった。うちが勝つにはこれしかないという野球ができた」と興奮が収まらない様子だった。
 試合は常に九州三菱自動車がリードし、てるクリニックが追い掛ける展開に。同点で迎えた八回表。6番比嘉将太が九州三菱の好投手・有吉の高めの速球を振り抜き、右中間を破る三塁打で出ると、主将上原光徳が中堅へ犠牲フライを打ち、勝ち越しを決めた。
 てるクリニックは狙い球を絞り、堅実な攻めで12安打を放ち、点を重ねた。猛打賞の友寄翔は「相手チームの動画を見て、事前の準備が効いた」と振り返る。
 スタンドには選手の職場や少年野球チームも加わった応援団が声援を送り続けた。七回に同点打を放った3番の照屋樹は「普段は声援を受けることがない。応援の力で勝てた」と感謝した。
 選手の職種はさまざまで、なかなか集まって練習することもできない。平日は仕事を終えた午後8時から11時ごろまで練習をする。外野の連係はイメージトレーニングで準備し、グラウンド練習で確認する。照屋監督は「難儀で辞めようという時期もあったが、今までの苦労が報われた。選手が持ち味を出してくれた」と目を細める。
 初めてつかんだ県代表、地元開催のチャンス。ダークホースの快進撃が始まった。(関戸塩)

◆5人が継投 的絞らせず/てるクリニック
 てるクリニックの照屋監督が「7点は覚悟していた」という投手陣も九州三菱自動車の強力打線を相手に力投した。「相手に的を絞らせない」と次々に替える継投策は5人の投手が登板した。
 先発はカットボールが武器の左腕・安里渉がリズムよく5回までを4失点で投げ抜き、ゲームをつくる。続く平良幹治郎が荒れ球ながら無失点でつなぎ、上原光貴は打者のタイミングを外す投球。下手投げの榎並翔太が打者の目先を変えると、安定感のある中村泰忠がゲームを締めた。

◆ビッグ敗れ、復活戦へ 好機生かせず雪辱誓う
 地元開催の地区予選で、西部ガス(福岡)に挑んだ沖縄第2代表のビッグ開発ベースボールクラブだが、3併殺で好機を生かせず観客席の声援に応えられなかった。
 ピンチでの粘りが明暗を分けた。先発の羽地淳平は持ち味の微妙に変化する直球を生かし、二回まで1安打に抑えた。しかし、一本調子になった三回、直球に的を絞られ4安打を浴びて4点を失った。交代した山城和也はカーブやスライダー、ツーシームと緩急をつけて投げ分けたが、制球が甘くなった九回に長短打で3点を奪われた。捕手の仲村竜之介主将は「2人の長所を引き出せなかった」と配球を悔やんだ。
 攻撃でも西部ガスの大木康智の140キロ前後の直球と膝元に沈む変化球を打ちあぐね、五回まで1安打に抑えられた。
 それでも六回、連打でつくった一死一、三塁の好機に、4番の仲村に打順が回る。追い込まれ、打席を一度外した時、ベンチの下地剛監督が右方向を狙うよう指示しているのが見えた。「落ち着いてヒットゾーンを意識できた」と、内角寄りの直球を右前にはじき返し、一矢を報いた。
 大差での敗戦にも、観客席の応援団は最後まで声援を送った。仲村は「守備でリズムをつくって、次こそは期待に応えたい」と敗者復活戦での雪辱を誓った。(沖田有吾)

◆県出身の2選手 西部ガスで活躍 大城と天久
 西部ガス(福岡)の県出身2選手が、故郷沖縄での公式戦で活躍した。1番一塁手の大城昌士(首里中―神奈川・東海大相模―東海大)は、一回表こそ三振に倒れたが、緊張のほぐれた2打席目以降は2安打1四球とリードオフマンの役割を果たした。観客席には親戚も応援に駆け付け「少しはいいところを見せられた」と笑った。
 少年野球の八島マリンズ時代に日本一を達成した天久朝治(石垣第二中―岡山・高梁日新高―九州国際大)は、5番DHで先発。「初球から打っていこう」と積極的な打撃で、九回表にダメ押しの中越え適時二塁打を放つなど、3安打4打点と持ち味の勝負強さを発揮した。
 2012年設立のチームは、初の都市対抗大会出場を目指している。天久は「一戦一戦集中して、必ず代表権を取る」と目標に向かって気を引き締めた。

てるクリニック―九州三菱自動車 8回てるクリニック1死3塁、上原光徳の犠牲フライで逆転の生還を果たす比嘉将太(右)=31日午後、沖縄セルラースタジアム那覇(金良孝矢撮影)
六回裏一死一、三塁から右前に適時打を放つビッグ開発の仲村竜之介=31日、浦添市民球場(沖田有吾撮影)
(左から)大城昌士、天久朝治