芸能・文化

『後期20世紀 女性文学論』 女性作家を刺激的に論考

『後期20世紀 女性文学論』与那覇恵子著 晶文社・2000円+税

 本書の著者与那覇恵子は、かつて『現代女流作家論』を出版した。その問題意識を持続して本書が出版されている。まずこのことに敬意を表したい。「文学を創造する女たちの流れを女流作家と規定することも可能だし、文学を創造する女という意味で女性作家と名づけることも可能である」としているが、今回は「女性文学」という言葉を選択して「後期20世紀の女性文学」について解説している。

 このように自らの使用する言葉の拠点を深く考察しながら表出される作品の解説は実に興味深い。構成は4章からなり、第1章女性文学の位相、第2章身体性をめぐる表象、第3章女の意識/女の身体、第4章新たな言語空間の構築に向けて―となっている。
 なじみ深い女性作家たちが次々と登場するが、時代と格闘した女性作家たちの問題意識が丁寧に紹介されている。これらを読むことにより、自らの読書体験を振り返り、知識を整理することにも役立つ。それゆえに文学史を俯瞰(ふかん)する手引書として読むこともできるだろう。
 しかし、なんといってもこの著書の魅力は作品に即して記述される著者の思いや見解にある。圧巻は第4章の三枝和子をめぐる論考で、極めて刺激的である。例えば「三枝にとって『愛』や『恋愛』という言葉は『発情』を隠ぺいする人間のさかしらな関係概念にすぎない。『愛』や『結婚』という言葉は、一人の男に女を縛り付けるために生み出された男の論理を示す表現なのである」と。
 99歳になるおばあたちが語る戦争悲劇譚『うそり山考』や『小説清少納言「諾(なぎ)子の恋」』なども小説の手法として面白い。また、三枝の小説には〈戦争〉の影が色濃く反映されているとして、「戦前と戦後の価値が切断された中で、価値のない者として生きなければならない不条理な生を描く方法」「戦後の時間を〈空虚な生〉として表現する方法」は「目取真俊の『水滴』に通底する」と示唆する見解も興味深い。
 研究書ではあるが、読みやすい文体は具体的な作品世界と相まって読者を一気にとりこにするはずである。
 (大城貞俊・作家、琉球大学教授)
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 よなは・けいこ 東洋英和女学院大学国際社会学部教授。女性文学会・大庭みな子研究会代表。

後期20世紀女性文学論
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与那覇 恵子
晶文社
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