【キラリ大地で】アメリカ 涼子・ボーゲルさん(那覇市出身)


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米国で生け花の世界を伝える涼子・ボーゲルさん

華道の神髄 アメリカでも
 生け花を教えている涼子・ボーゲルさん(46)=旧姓金城、那覇市出身=は3年前、夫マットさんの転勤で沖縄からバージニア州、バージニアビーチ市に移転した。結婚して以来14年間マットさんが沖縄勤務だったため、地元で生け花を習い、師範になった。

 当時86歳の生け花の先生に別れのあいさつをした際、「アメリカで生け花を広めてきて」と背中を押されたと言う涼子さん。今その言葉を実践し、沖縄で学んだ生け花の技量を発揮して教室は日本人、韓国系、アメリカ人の生徒で大盛況。周りの人たちを和やかな雰因気に包んでくれる明るい人柄の涼子さんのモットーは、「楽しみながら生ける」の通り、楽しいクラスが演出されている。
 涼子さんは専正池坊清華支部の会員として、1956年に日本で設立された国際文化団体「いけばなインターナショナル」の沖縄支部の第三副支部長としても活躍してきた。この団体は国籍や流派を問わず、花を通して相互理解を深める目的で世界60カ国に164支部、7800人の会員がいて友好を深める活動を行っている。
 涼子さんは「華道を志すきっかけとなったのは、アメリカ人の友人が出品している花展を見て感動したこと。長年探していた自分のやるべき道はこれだと思い、翌日には華道教室の門をたたいていた」と当時を振り返る。
 そして「師である中島先生は米国人の夫を早くに亡くした後も沖縄に残り、嘉手納基地で米国人に生け花を教えていた。先生のデモンストレーションを手伝いながら教授の仕方、そして華道の神髄を学ぶと同時に、人生をも学ばせてもらった。また花展、定例会などに出品しながら15の違う流派の先生方の生け方を見たり、家元講習会に参加したりし、それぞれの違いを知ることができた。生け花を幅広く学ばせてもらったことは今教える立場になって役に立っている。いけばなインターナショナルの歴史係や記録係も担当し、米国人の夫人たちの通訳も引き受けた」と述懐する。
 昨年、墨絵50周年記念のイベント会場に7種の型の花を生け、会場を華やかに盛り上げた涼子さんは、「その趣旨に合う生け花を考案するのに苦労した。コケが付いた枝物を使い、古典生け方を創作した。バージニア州は四季があり色とりどりの花木があるが、花市場には枝物が少なく材料を見つけるのが大変だが、友人宅の庭から調達することもある」と話す。
 そして「専正池坊は西洋にはない『簡素であるが故の美しさ』の日本的で控えめな古典の生け方と時代に沿った現代生け花もある。外国にいてそんな奥の深い日本の文化に触れさせ、心を癒やすお手伝いができたらと思う。すてきな生徒たちとの出会い、夫や子どもたち、沖縄の家族の支援、沖縄の先生方の励ましに支えられていることに感謝している」と語り、チャリティー花展を開く夢に向かっている。
(鈴木多美子通信員)