【島人の目】ジャスミン革命の地を訪ね


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 先日チュニジアを旅した。チュニジアはイタリアから最も近い北アフリカのアラブ国。南部のシチリア海峡を挟んで約150キロの距離にある。

 チュニジアでは2011年に民主化を求めるジャスミン革命が起こり、23年間続いたベンアリ独裁政権が崩壊した。それはエジプトやリビアさらにシリアなどにも波及して、アラブの春と呼ばれる騒乱に発展した。だが、多くのアラブ諸国では民主化は成功していない。
 例えばアラブの大国で周辺への影響も大きいエジプトでは、独裁軍事政権を倒した民主化運動を、再び軍が立ち上がって弾圧するなどむしろアラブの春の後退とも見える事態も生じている。
 中東から北アフリカの国々は、騒動で安心して旅をするには程遠い環境にある。その中で曲がりなりにも民主化しつつあるチュニジアは比較的落ち着いているとされる。一方、チュニジア国内を自由に動き回るのは危険だという情報もあった。が、思い切って行ってみることにした。
 結論を先に言うと、チュニジアは平穏そのものだった。ところどころに自動小銃で武装した兵士が立っていたことを別にすれば、とても革命が進行している国のようには見えなかった。秋には本格的な民主政権樹立に向けて総選挙が行われることになっていて、有権者の名簿作りが急ピッチで行われていた。 
 アラブの春の民主化は、前述したようにチュニジアを除けば一進一退の状況が続いている。しかし、それはきっと本格的な民主化に至るまでの足踏みなのだと思いたい。アラブの春が結実するためにも、その手本としてチュニジアの民主化が大幅に前進してほしい。アフリカの強烈な日差しに焼かれながら心の底から思った。(仲宗根雅則、TVディレクター)