【チャイナ網路】「草山行館」の焼失


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 7日未明、台北市郊外にある「草山行館」から出火し、584平方メートルの本館を全焼した。日本植民地時代に建てられ、戦後蒋介石総統の最初の官邸となった建物の出火原因は放火。独立派により「去蒋化(脱蒋介石化)」が推し進められる中での事件に、さまざまな憶測が飛んでいる。
 「草山行館」は1920年、台湾製糖が温泉保養所として建てた和洋折衷の木造建築。23年には皇太子として訪台した昭和天皇が訪れ、蒋介石がマッカーサーやニクソンと会談した場所でもある。
 蒋介石の死後、廃虚となるが、建物の歴史的価値を認めて修復を命じたのは、皮肉にも今「去蒋化」を叫ぶ陳水扁総統だった。台北市長任期中の仕事だ。2002年、史跡に指定されている。
 ほんの3年前まで、蒋介石への敬意さえ示していた陳総統。その豹変(ひょうへん)ぶりは、年末の立法委員(国会議員)選挙と来年の総統選をにらんでのパフォーマンスとも読める。いまだ議会を通過しない本年度予算、悪化する治安…。混迷する国内問題の解決より選挙対策を優先する政府に、国内の失望は濃い。

注:蒋介石の「蒋」はクサカンムリに將
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学准教授)