南米つなぐ すばの味 県系の玉城さん親子


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 ブラジル南西部のカンポグランデ市では、県系人が広めた沖縄そばが市の文化遺産に登録されるなど、まちの名物になっている。たっぷりの具材に濃い目のしょうゆ味のスープが特徴で、沖縄のソウルフードが地球の反対側で独自発展を遂げた。

このまちで父の店を手伝う県系3世のニウソン清玉城ジュニアさん(30)は、本場沖縄のそば屋で修業した経験を持つ。「沖縄で学んだのは日々味の工夫を施す必要があるということ。店を発展させたい」と意気込む。
 ニウソンさんの父は1999年、10年間に及ぶ日本での出稼ぎ生活を経て市内の公設市場「フェイラ」に、妻の名前を冠した「ジャージそば」を出店。ブラジル人の従業員も雇い、家族で切り盛りする。たっぷりの牛肉やネギ、エビなどを載せた「ジャージそばスペシャル」が看板メニューだ。ブラジル人客も訪れ、連日盛況をみせる。
 ニウソンさんは2011年9~12月、名桜大学に留学した際、父の店をさらに繁盛させるために老舗そば屋「我部祖河食堂」で修業した。帰国後、沖縄の味をブラジルで提供したが、客には受けなかった。「本場のそばはおいしいが、甘くてこちらでは合わない。ブラジル人は肉がたくさん入り、しょうゆをふんだんに使った濃い目の味が好き」と分析する。
 ニウソンさんが修業した我部祖河食堂名護店の金城大地店長(32)は「言葉は通じなかったが、とても真面目で、学びたい姿勢がうかがえた。修業したことを生かし、ぜひブラジルで沖縄そばを広めてほしい」とエールを送った。
 一方、ニウソンさんは沖縄で「ウチナーンチュ」としての自覚が芽生えたという。「沖縄へ行く前はただの日系人だと思っていたが、自分の故郷は沖縄だと実感した」と強調。祖先から連綿と続く、沖縄のトートーメー(位牌(いはい))の意味を学び、「ご先祖の懐に包まれているような感じだった」と表現する。その上で「ブラジルでも沖縄の文化を伝えたい。父の店をきょうだいで発展させたい」と意気込んだ。
(梅田正覚)

「きょうだいで力を合わせて店を発展させたい」と意気込みを見せるニウソン清玉城ジュニアさん(右)と父のニウソン清玉城さん=13日、ブラジル・カンポグランデ市のフェイラ
ニウソン清玉城ジュニアさんの店の人気メニュー「ジャージそばスペシャル」