【統一地方選】選挙公報7割未発行 県内9市町村止まり


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 9月と10月に投開票される統一地方選で、無投票当選を含む県内31市町村のうち7割の22市町村が、各選挙区の候補者の顔ぶれや公約をまとめた「選挙公報」を発行しないことが、4日までに琉球新報の調べで分かった。

全国の市町村では6割以上が公報発行のため条例を制定しているが、沖縄は今選挙で3割の9市町村にとどまる。識者は「行政は有権者が判断する材料を提供できず、政策本位で争う選挙の機会を阻害している」と指摘する。
 選挙公報は、公職選挙法で衆参両院選と県知事選で発行が義務付けられているが、市町村の首長選や議員選は任意で、条例制定が必要になる。公報紙は告示後に各世帯に配布される。候補者の重点政策が掲載されて読み比べができるため、投票の判断に有用なツールとして活用できる。
 今統一選で、うるま市、宜野湾市、西原町、南風原町、読谷村、北中城村は初めて発行する。宜野湾、西原はホームページ上にも掲載して利便性を高める。
 豊見城市や沖縄市は過去の選挙で発行した。中城村は今村議選が無投票となっているため未発行。
 一方で候補者の多い都市部の名護、南城、石垣の3市のほか、北谷町や八重瀬町は発行を見送った。未発行の理由について、各選挙管理委員会は「地元紙が広報している」(石垣市)、「人員や予算の確保が難しい」(北谷町)、「配布日数が短い」(八重瀬町)と難色を示している。
 総務省によると、2013年末現在で市区町村議員選挙の場合、全国1742自治体のうち、6割以上の1100自治体が条例を制定する。市区は全国812自治体のうち、約9割の709自治体が制定しており、県内市町村は圧倒的に少ない。10年まで沖縄は全国で唯一、県内全域で制度未整備の県だった。本紙のキャンペーン報道により、11年2月に豊見城市で初めて、地方議員選挙で公報が配布された。
 選挙制度に詳しい島袋純琉大教授(政治学)は、「候補者の情報が乏しいと地縁血縁の選挙になりがちだ。政策本位の選挙の実現、住民自治の意識向上のためにも公報は必要だ」と有用性を強調する。「投票率低下に歯止めをかけるためにも制度を導入するべきだ」と指摘した。(宮城征彦)

9月7日投開票の沖縄市議選、宜野湾市議選で各家庭に配布する選挙公報
選挙公報の発行について