『少年アヤちゃん焦心日記』少年アヤ著 愛に立ち向かう


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 前回ここで、少年アヤ『尼のような子』を紹介しましたが、これは旧作でした。新刊レビューなのにすみません! 看板に偽りありとはこのことじゃないか。

 お詫びを込めて、今度こそ新刊レビューです。2013年の5月からの日記連載を一冊にまとめた本書。アイドルの追っかけをしたり、一目惚れした韓国料理屋の店員に職業詐称し近づこうとしたり、ファンシーショップでラブリーなものを買いあさったり。湧き上がる衝動に忠実なのは前作と変わらないが、しかしアヤちゃんの中にはたしかな変化も見られる。これまで自らを「オカマ」と位置づけ、オカマと称されることに甘んじてきたアヤちゃんだが、それをやめたのだ。
 さらに前半ではアイドルやイケメン店員といった「自分ではない誰か」に並々ならぬ情熱を注ぎ込むが、日記が後半に進むにつれ、自分とそのルーツである家族へ、その視点は変化していく。
 お父さんとの関係、お母さんとの関係。おじいちゃん、おばあちゃんとの関係。幼少時から細やかな情緒で家族の感情を受け止めてきた。それらを見つめ直し、一枚一枚自分にまとわる花弁をはがすような行為は、読んでいるこちらも痛みで直視できなくなる瞬間がある。それでも、傷つきながらも愛に立ち向かうその姿は、神々しくて目が離せない。
 (河出書房新社 1380円+税)=アリー・マントワネット
(共同通信)
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。

少年アヤちゃん焦心日記
少年アヤ
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アリー・マントワネット