【チャイナ網路】字幕翻訳家の誕生


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 台湾のちょうど“へそ”のあたり。台中市から車で1時間ほどの距離にある山間の町・埔里が今、定年を迎える「団塊の世代」の日本人をターゲットとしたロング・ステイ(長期滞在)客誘致に乗り出している。
 埔里は、中央山脈に囲まれた台湾最大の盆地だ。年平均気温約20度。人口8万6千人と決して大きくはないが、国立大学を有し、古くから良質のわき水を生かした酒造りの地として知られる。
 近隣に景勝地や温泉があり、訪れる人は少なくなく、山の幸を使った郷土料理は言うにおよばず、日本料理や韓国、インド料理まで楽しめる町でもある。
 ロングステイを打ち出したのは、この恵まれた環境を生かし、他の観光地との差別化を図ろうというもの。2003年から始めた住民への説明会は40回以上。親日的な住民の合意はすぐに得られ、町を挙げての誘致活動が始まった。
 まず行ったのは、認証制度の立ち上げだった。接客や設備のレベル、日本語対応の有無などを審査し、合格者に「台湾の心」と書かれた認定証を交付する。現在、病院、スーパーなど6軒が認証を受けている。
 ロングステイ専用に23戸が用意されたマンション「元宝」もその一つ。まだ新しい3LDKの部屋には、ウイークリーマンション並みの設備が整う。家賃は一カ月約5万円(光熱費など別)。お試しステイなら一週間約2万5千円(光熱費など込み)と割安だ。
 本格的な受け入れが始まってまだ1年と短いこともあり、現在の入居者はわずか2、3戸と少ない。町では日本語によるサービスの充実を進めつつ、今後5年から10年かけて誘致活動を進めていくことにしている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学准教授)